その日オキニから思いもよらない言葉を聞かされた。
「あ〜よかった、今日会えて」
「何？どうしたの？」
「実は大変なことになってしまって・・・」

　その話とは、昨日個人的な事情というか出来事があってもう風俗店で働けなくなったという内容だったのだ。引退する日はなんと明日。突然の出来事だった。

「今日と明日に来てくれる指名のお客さんにしかお別れの挨拶ができないよ〜(泣)・・・」
「虫の知らせってやつかな？なんか今日むしょうに君に会いたくなって会社を早く切り上げたんだ」
「そうだよ。多分2〜3人くらいしか会えないと思う。こんなことになるなんて思ってもいなかったから連絡が取れる人もほとんどいないし、昨日までみんなに『またね』なんて感じでにこやかに見送りしたのに・・・、あ〜ん！」
「そういう意味では、これで会えなくなるのは俺もかなりショックなんだけど、最後にお別れができた俺はラッキーだね」

　オキニとの最後の時間はあっというまに過ぎ去っていく。抱きしめて、何度もキスをして、愛撫して、オキニはいつになくFを丁寧にしてくれた。明日は仕事があるのでオキニが出勤している時間には来ることが出来ない。こんな楽しい時を過ごせるのもこれで最後かと思うと残された時間の1秒1秒が過ぎていくのが切なくて痛い。

　もしこの文章を読んでいるあなたがMzちゃんの指名客だったら、私から伝えたい。彼女はあなたに最後のお別れができなくてとても残念がっていたことを。

　店の扉を出て階段の踊り場に二人立ち最後の言葉を交わす。
「お別れね。今日までありがとう」
「楽しかったよ、今日までありがとう。」
「元気でね」
「さようなら」

　埼玉支部長　ファントム　(H17.04.28)