by 銀次氏
街路樹が続く道を歩いている。季節は冬。ショッピング街のようなこの場所は若い女の子達の明るい声で満ちている。
ドキドキしている。胸の高鳴りがますます大きくなってくる。今、私は久しぶりに所在が分かった最愛のオキニに会いにいくところなのだ。
それにしてもここはどこなのだろう。まるで外苑前のような風景なのだが、地名表示には聞いたこともない地名が書いてあるのだ。まあそんなことはどうでもよい。もうすぐあの子との再会がかなうのだ。
駅から歩いて10分余りというところか。一般の商店が次第に姿を消していくにしたがって、風俗店がちらほらと現れてくる。どの店もおよそ風俗店とは思えないようなお洒落な店構えではないか。その中にあって、まるでこの店は・・・
その店は古風な木造の旅館、いや時代劇に良く出てくるような遊郭と言ったほうが正しいかも知れない。玄関は土間のような作りで、そこには古風な下駄箱さえあり、いったいこんな作りの店が今の世の中にあるのだろうかと驚いてしまう。店構えに合わせているのだろうか、店員は和装であり、そこそこ丁重に迎えてくれる。木張りの廊下を案内されて部屋に通されると、そこはまさに6畳の純和室だ。煙草に火をともし、出された緑茶をすすりしばし待つが、未だに胸の高鳴りは全く衰えていない。窓の外の風景を見るともなしに眺めていると、背後で部屋の引き戸が静かに開く音がした。
「いらっしゃいませ」とあいさつする彼女の顔には不思議なものでも見たような表情が浮かんでいる。衣服は想像通り浴衣に似た和装をまとっている。
「久しぶりだね。ちょっと痩せたかな?」
「驚いた、来てくれたんだね。でも、どうしてここがわかったの?」
そう語る彼女はなにか悲しそうな表情を浮かべている。
「でも、どうしてこういう店に変えたんだ?ミキが本番をするなんて、俺も悲しいよ」
「ごめんね、でもどうしょうがない事情があるの」
そんな切ない話をしながら過ごした。悲しそうだった彼女の顔が次第に明るく変化していった。結局、ふたり布団の上で抱き合ったまま積もる話をしていただけで終了時間が来てしまった。
「また来るよ。いや、ちょくちょく来るよ」
「ほんと!嬉しいな」
部屋を後にしかけて、ふと部屋の窓から外に目をやると、真っ白な空が広がっていた。雲ひとつない快晴なのに不思議と空は雪景色のような純白に染まっている。雪景色と違うのは空は大気なので限りなく透明感があるところだ。この世に悲しい色というものがあるとすれば、きっとこの空の色なんだなと思った。
2003年冬、北千住「ニューモーニング」はこの頃の私の行きつけの店だった。この店の特徴は、フロアが広くてゆったりしているところだ。席数は22席もあり、北千住では最も広い。シートもゆったりとしている。入り口を境に左右別々のエリアに分かれていて、指名をした子が先客に付いているときは、必ず反対側のエリアに案内される。これでオキニが接客する気配を感じることなく待てるのだ。店員の接客態度も申し分ない。
この日は最愛のオキニに会っていた。何日か前に見たオキニの登場する夢を語って聞かせると熱心に耳を傾けてくれた。
「変な夢だろ。でも目覚めてからも何だか妙に記憶に残っていて、しばらく切ない気分だったよ」
彼女はいたって真面目な顔でこう言った。
「夢でせっかく会えたのに、そんな夢じゃ悲しいね・・・」
北千住、ピンサロ「ニューモーニング」
(システム)
1200〜1700:5,000円
1700〜2100:6,000円
2100〜2400:7,000円
写真指名料、本指名料:2,000円
W回転:プラス2,000円で20分づつの計40分
(H16.08.30)