〜©日本ピンサロ研究会〜
風俗愛好者のための法律講座 その10
風俗関連諸法「性風俗営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等の規制に関する条例(ぼったくり防止条例)」
by KEN氏
「ぼったくり」・・・なんとも忌々しい響きがある。最近の当研究会の緊急報告を見ても腹立たしくなる。時には死者さえも出ることがあり,最近も関西方面で被害に遭われて亡くなられた方がいた,ご冥福をお祈りしたい。
当研究会もぼったくり情報は実名で提供させて頂くので是非ともご投稿下さい。いつまでも連中に甘い汁を吸わせておくわけにはいかない,ということで今回は東京都で成立したばかりのぼったくり防止条例を取り上げてみたい。
1 目 的
1条によれば「この条例は、性風俗営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等について必要な規制を行うことにより、個人の身体及び財産に対する危害の発生を防止することを目的とする。」とされる。よく見て頂きたい,「不当な勧誘」と「料金の取り立て」について規制されるのみで「料金」自体はなんら規制をしていない。いくら吹っかけようが構わないわけである。確かに高級クラブなどはぼったくり店より遥かに高額のところもあるようであり,一律に規制することはできないであろうが,何らかの形で規制をしてほしかった。これでは片手落ちと言われても仕方ないのではないだろうか?
2 定 義
本条例において規制されるのは指定区域内で行う以下の営業である。条例ではこれを「性風俗営業等」営業と定義付けしている。
1 ソープを除いて,営業所を設けて、当該営業所において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業。
2 営業所を設けて、当該営業所において客の接待(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第二条第三項に規定する接待をいう。)をして客に飲食をさせる営業のうち、バー、酒場その他客に酒類を提供して営む営業。
ここでは届出・許可は要件とはなっていない。当然にもぐりの営業も対象である。また,風適法のように「個室において異性の客の性的好奇心に応じ・・・」ともなっていない点にも注意,これは風適法の店舗型性風俗特殊営業とは明らかに異なる概念で,ぼったくりの主役となっているピンサロを含めるためにこういった形に落ち着いたものと思われる。
さらに問題なのが該当する営業が指定区域内に限られるということである。指定区域外では適用されない,いったいなぜぼったくりに区域分けが必要なのか理解に苦しむところである。
3 規 制
○料金等の表示
まずこれがぼったくりであると明らかにするために必要な事である。風適法では性風俗特殊営業については法令上の明示義務はなかった。(飲み屋等の風俗営業は明示義務がある)明示すべき料金は以下のものである。
1 営業に係る料金。入場料のみならず,サービスの対価等の料金も含まれる。
2 違約金その他名目の如何に拘わらず客が支払うべきとする定めがあるときはその内容。当然金額のみならず何をどうすれば客がどうしなければならないかをはっきりさせることになる。
これらを公安委員会規則に基づき,営業所内で客に見やすいように表示しなければならない事とされる。小さな字や観葉植物で見えないような状態ではいけないわけである。
○不当な勧誘、料金の取立て等の禁止
ぼったくりの実行行為の規制である。何人も,つまり客引きもボーイも勧誘・広告をする場合は以下の行為が禁止される。
1 実際の料金よりも著しく低廉であると誤認するような事を言ったり,表示すること。
2 違約金等の定めがある場合でそれを隠していたり,嘘を言うこと。
ただし多少の誇張は許される。著しい場合のみが規制対象である。商業活動の上での広告は若干の誇張は許される,これは訪問販売法絡みの判例であったと思う。しかし違約金等の定めは多少の誇張も許されない,常に明確でなければならない。
ぼったくりの柱,取り立ての規制である。何人も粗野若しくは乱暴な言動を交えて、又はその者から預かった所持品を隠匿する等迷惑を覚えさせるような方法で、当該営業に係る料金又は違約金等の取立てをしてはならない,とされる。
具体的な方法,例えば実質的な監禁や,無理な債務(キャッシング)の強要などには触れていない。やはり肝心な事が落ちているような気がする。もしかしたらそれは刑法等で対応する考えかもしれないが。
○性風俗営業等を営む者の勧誘等の委託に伴う指導義務
経営者は勧誘(ぽん引き)広告,取り立てを行う者に対し,本条例に違反しないように指導しなければならない。
しかし経営者が「指導していました」と一言言えばこの規定は全く意味をなさないものになる。公選法違反同様連座制として即座に営業禁止等の措置が取れるような規定が望まれる。
4 命 令
○指示
経営者又は従業者が本条例の規定に違反したときは必要な指示が,客引きらが違法な勧誘・広告,違法な取り立てをしたときはそれらの者に指導するよう経営者に対して指示することができる。特に具体的にどういった指示をするかは明記されていない。必要な指示である。
○営業の停止
指示に従わなかったとき、又は経営者若しくはその従業者が当該営業に関し次のいずれかに該当する行為をしたときは、八月を超えない範囲内で期間を定めて、当該営業の全部又は一部の停止を命ずることができる。
1 第十三条(公安委員会の命令に違反)に規定する罪に当たる違法な行為(公安委員会の命令に違反)
2 一部の刑法犯
3 6条2項の規定による指示(違法勧誘是正指導命令)をした場合で、その後三月以内に、委託を受けて、当該営業に関し人に客となるように勧誘をし、又は広告若しくは宣伝をする者(ポン引き)が、4条1項(違法勧誘等)の規定に違反したとき
4 6条3項の規定による指示(違法取立是正指導命令)をした場合で,その後三月以内に委託を受けて、当該営業に係る料金又は違約金等の取立てをする者が,4条2項(違法取立等)の規定に違反したとき。
条例に反しても営業の禁止,それも8月が限界となる。廃止を命ずることは出来ない。また風適法は営業の停止を「当該施設を使用した営業」と限定しているが,本条例ではなんら制限がなく,経営者は8月間(停止期間)は区域内での営業が(たとえ違う施設を用いても)一切出来ないのも本条例で注意すべき点である。
標章及び立ち入り・検査に関しては風適法とほぼ同様な規定がなされている。
5 罰 則
○一年以下の懲役又は百万円以下の罰金
営業停止命令に違反した者
○六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金
1 3条に違反し、営業に係る料金について実際のものよりも著しく低廉であると誤認させるような事項を表示し、又は同条2号に掲げる事項について不実のことを表示した者
2 違法勧誘,違法取立をした者
○二十万円以下の罰金
1 8条4項の規定(標章毀損)に違反した者
2 報告若しくは資料の提出を拒み、若しく報告若しくは資料の提出について虚偽の報告をし、若しくは虚偽の資料を提出し、立入り若しくは帳簿等の検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
○両罰規定
個人が13条に規定する罪を犯した場合はその属する法人又は雇い主に対しても罰金刑を科す。
6 終わりに
やっとぼったくりに対して行政が重い腰を上げたわけであるが・・・かなり不満の残る条例となってしまった。特に料金については何の制限もなく,極端な話しボトル50万を請求してもいいことになる。規制されているのは「請求の方法」だけで有ることに留意しなければならない。また,料金の明示なども後から店舗内にでかでかと掲示して「昔からしていました」と言われれば打つ手無しである。せめて客に対して料金表を面前で見せる等の「告知義務」をも課すべきであった。
また地域を限定しているのも全く解せない。条例の内容はどこでも規制されて然るべき内容である,裏を返せば規制区域以外はぼったくりをしてもいいと行政が認めたようなもので,強く再考を求めたい。
それにしても今まで何故行政=警察が何もしてこなかったのかと思う。風適法だけでも十分対処可能だった筈である。極端な話し,風適法の立入調査権を行使して客を救うことは出来たはずだし,風適法上の無届・無許可営業でも十分摘発出来るのではないか?そんな疑問が湧いてくる。
ただ物事を否定的にばかり捉えても昔の某野党のようになってしまうので,これも一つの進歩として捉えたい。願わくばさらに実効性の高い条例に改正されることを望む。