○従業者名簿(第36条)
風俗営業,映像送信型性風俗特殊営業を除く性風俗特殊営業,飲食店営業を営む者は,営業所(事務所)ごとに 従業者名簿を備え,従事する者の住所,氏名及びその他総理府令で定める事項を記載する。
○報告(第37条第1項)
公安委員会は,この法律の施行に必要な限度において,風俗営業者,性風俗特殊営業者,接客業務受託営業者 等に対し,その業務に関し報告又は資料の提出を求めることができる。
○立入り(第37条第2項ないし第4項)
警察職員は,この法律の施行に必要な限度において,風俗営業又は店舗型性風俗特殊営業の営業所(個室等を設ける営業所にあっては客が在室する個室等を除く)に立ち入ることができる。その際警察職員は身分を示す証明証を携帯し,関係者に提示しなければならない。
なお本法に規定される立入りの権限は犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
本法は立入りにつきなんら時間的な制限が加えておらず(他の法令では夜間は禁止されている事が多い)また,立 入りにつきなんらの許可も要せず,突き詰めれば警察機関の思う時に思うままに立入りを実施することができる,何の前触れもなく突然にである。
ただし,立入りできるのは警察職員(必ずしも警察官でなくてもよく,いわゆる警察事務 吏員[制服を着用しない行政職地方公務員,警察官は高級幹部を除き公安職地方公務員]であっても可)に限られ,その警察職員といえども,無制限に立入りが許されているわけではない。個室等に客がいるときと犯罪捜査の場合は立ち入ることができない。この場合は裁判所が発付する「捜索差押許可状」等の令状が必要となる。
わが国の刑事訴訟法は「令状主義」をとっており,捜査につき強制力を行使するには令状によらなければならず,いやしくも本法 の規定を利用しての犯罪捜査を第4項で禁じている。
あえて明文化されているのは,その恐れが大きいが故の現れ であり,捜査機関も慎重にならざる得ないであろう。
あくまで立ち入りできるのは「本法の施行に必要な限度」であり,本法違反の犯罪捜査といえども令状主義が大原 則であり,本規定に基づく立ち入りにより得られた証拠は,目前の事実除き,犯罪の立証のための証拠として利用す ることはできない。もし仮に,検索・検束をすれば違法な証拠となり証拠から排除されてしまう。
ただし,立ち入りにより現行犯逮捕され,それによる捜索差押に基づき得られた証拠は,その証拠能力を否定されない。また,立入りと同時に令状を得ていれば当然に適法なものとなる。
刑事訴訟法第220条(令状によらない差押え・捜索・検証)
第1項 検察官,検察事務官又は司法警察職員は第199条〔逮捕状による逮捕〕の規定により被疑者を逮捕する場合又は現行犯人を逮捕する場合で必要があるときは,左の処分をすることができる。第210条〔緊急逮捕〕の規定により被疑者を逮捕する場合において必要があるときも,同様である。
いかな令状主義と言っても,立入りを犯罪捜査に利用させないと言っても,立入りにより犯罪を現認した司法警察による現行犯人の逮捕を否定しているわけではない。
立入りはあくまで「立入りだけ」であり,店舗内の捜索,何らかの作為義務(命令により何かを行うこと)又は不作為 義務(命令により何かをしないこと)を課すこと等が許されているものではない。今後この立入りによる摘発等は問題 が生ずる可能性が極めて大きいといえる。
なお,立入りの際の身分証明の提示は,立入りを受ける者から請求がなくとも,必然的にしなければならない。