風俗愛好者のための法律講座

「風俗関連諸法(改正風営法)」 by KEN氏


 本年4月1日から改正風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)が施行された。今までは我々にはあまり関係ない法律であったが,性風俗特殊営業という概念が創設され,インターネットも規制の対象となり,本研究会にとっても,最も研究が必要な法律の一つになった。その概要は以下のとおりである。


1 目的

  第1条
 この法律は,善良な風俗と清浄な風俗環境を保持し,及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため,風俗営業及び性風俗特殊営業等について,営業時間,営業区域等を制限し,及び年少者をこれらの営業所に立ち入らせること等を規制するとともに,風俗営業の健全化に資するため,その業務の適正化を促進する等の措置を講ずることを目的とする。

 法律における目的条項を軽く見ている方もいるが,その法律の立法趣旨・精神が披瀝されており,各条文の解釈・適用について,この目的に沿って行われねばならず,目的に反する解釈は許されないという意味からすれば,目的を正しく解釈し判断することが法律を理解するうえで大事なことである。

 目的自体に改正による本質的変化はない。条文自体は,風俗関連営業が性風俗特殊営業に変わっただけである。本法の目的は「業務の適正化を促進する等の措置を講ずること」である。なぜ措置を講ずるか?それは「善良な風俗と清浄な風俗環境の保持」と「少年の健全な育成に障害を及ぼす行為の防止」のために,営業時間,営業区域等を制限し,年少者らに営業所に立ち入らせる事を規制するためであり,風俗営業の健全化に寄与するためである。

 つまりは業務適正化促進措置を講ずることが目的ではあるが,上のために措置を講ずるのであり,それ以外のために業務適正化促進措置を講ずることは許されないと解すべきである。


2 営業等の種類

 本法では以下の営業が規定されており,規制の対象となる。

◎風俗営業(第2条第1項第1号ないし第8号)
  ○パチンコ店,雀荘,ゲームセンター,他(第2条第1項第7号及び8号)
  ○接待飲食等営業(第2条第1項第1号ないし第6号・第2条第4項)
    ・キャバレー,サロン(ピンサロを含む),クラブ
    ・スナック,喫茶店(一部)

◎性風俗特殊営業
  ○店舗型性風俗特殊営業
    ・ソープランド(第2条第6項第1号)
    ・ヘルス,イメクラ等ソープを除く個室系風俗(第2条第6項第2号)
    ・ストリップ(第2条第6項第3号)
    ・ラブホテル(第2条第6項第4号)
    ・アダルトショップ,レンタルビデオ(一部)(第2条第6号第5項)
    ・その他政令(内閣の命令)で定めるもの(第2条第6号第6項)

  ○無店舗型性風俗特殊営業
    ・出張系風俗(第2条第7項第1項)
    ・宅配ビデオ(第2条第7項第2号)

  ○映像送信型性風俗特殊営業(第2条第8項)
    ・有料アダルトサイト(画像または動画を有する場合のみ)

◎接客業務受託営業(第2条第9項)
  コンパニオン・芸者等を想定しているものと思われる。

 旧法からかなり変更されている。風俗関連営業がより詳細に,また,新規に規制する営業を規定し性風俗特殊営業となり,ヘルス等も明文化され,インターネットの有料サイト,ホテトル等も加わった。さらに接客業務受託営業が新たに加えられた。都合のいい解釈をすれば,法律に認知されたと見ることもできるわけである。それも一つの法律の見方なのだ。世の中悪いように解釈するより,いいように解釈した方が道は開ける・・・・


3 営業の許可・届出

 風俗営業を営もうとする者は許可を,性風俗特殊営業を営もうとする者は届出をしなければならない。

◎許可(第2章)

 風俗営業の種別に応じ(性風俗特殊営業ではない),営業所ごとに公安委員会(=警察と思えばよい)の許可を受けなければならない。許可は「営業所」ごとであり,法人等の営業者単位で取得するものではない。つまり一法人が本店のほか3つの支店を有するとすれば,4つの許可が必要なのである。(第3条第1項)

 公安委員会は許可の申請があった場合は,欠格事由に該当しない限り許可するのが原則となる。ただし必要な限度において条件を付し(附款付許可),これを変更することができる。これも必要な限度に於いてで無条件に附款を付すことはできない。(第3条第2項)許可は許可証の返納によりその効力を失う(第10条第2項)。

○欠格事由

●人的欠格事由(第4条第1項第1号ないし第9号)    
・禁治産者,準禁治産者,復権を得ていない破産者
   
・1年以上の懲役若しくは禁錮の刑に処せられ執行を終わり,又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者
   
・特定の罪により1年未満の懲役若しくは罰金の刑に処せられ執行を終わり,又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者。
 注!)執行猶予の言渡しを受けた者は執行猶予の期間内に新たに罪を犯さず,その期間が満了した時点で刑の言渡しを受けなかったものとみなされ欠格事由には該当しない。ただし期間内は当然該当する。
   
・いわゆる暴力団関係者
   
・精神病者又はアルコール,麻薬,大麻,あへん若しくは覚せい剤の中毒者(原文のまま)
   
・風俗営業の許可を取り消され,取消しの日から五年を経過しない者
   
・許可の取消しのための聴聞等の期日が公示されたのち許可証を返納し,その日から5年を経過しない者。注!)脱法行為防止のための規定
   
・許可の取消しのための聴聞等の期日が公示されたのち許可証を返納し又は合併により消滅した法人で公示の日前60日以内に役員であった者でその日から5年を経過しない者
   
・未成年者
   
・法人でいずれかの欠格事由(未成年者を除く)に該当する者があるもの

●物的欠格事由(第4条第2号第1項ないし第3号)    
・営業所の構造・設備が国家公安委員会規則で定める技術上の基準に適合しないとき    
・条例で定める禁止区域内にあるとき    
・営業所に管理者を選任すると認められないことにつき相当の理由があるとき

○手続(第5条第1項ないし第3項)

 公安委員会に必要事項を記載した許可申請書を提出する。許可されたときは許可証が交付され,許可されないときはその旨通知される。

●申請書記載事項(第5条第1項各号)   
・氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては,その代表者の氏名   
・営業所の名称及び所在地   
・風俗営業の種別   
・営業所の構造及び設備の概要   
・管理者の氏名及び住所   
・法人にあっては,その役員の氏名及び住所


●相続(第7条及び第7条の2)

 風俗営業者が死亡した場合で引き続き営業をする場合は,死後60日以内(これは注意が必要。民法上の相続は原則として相続の開始があったことを「知ったとき」から起算されるが,本法では死後が起算日となり,仮に死亡を覚知していなくても60日が経過すれば,営業の権利については相続できないこととなる。)に公安委員会に申請して承認を受けなければならない。ただし相続人(法定相続人)に限る。遺贈(法定相続人以外の者への死亡後の寄贈)は認められない。

 法人で合併の場合は,合併につき国家公安委員会の承認を受けた場合は営業者の地位を承継できる。

○取消し(第8条)

 取消事由に該当する事が判明した場合は許可を取り消すことができる。取消は必要的取消ではなく任意的取消である。つまり取り消すことが「できる」に留まり,取り消さなければ「ならない」訳ではない。
 これは欠格事由に該当する場合の不許可と大きく異なる点である。(欠格事由該当の不許可は「必要的」なもので行政庁に裁量の余地はないが(覊束[きそく]行為)、取り消しは行政庁の裁量による(裁量行為)

●取消事由
・偽りや不正な手段で許可を受けたこと   
・欠格事由に該当していること   
・許可を受けてから6月以内に営業を開始しない又は6月以上営業を休止していること    
・3月以上所在不明

○構造等の変更(第9条第1項ないし第3項及び第5項)

 構造・設備等の変更(特例風俗営業者が行う場合を除く)は軽微なものを除きあらかじめ公安委員会の承認を要する。軽微な構造等の変更又は氏名・名称等の変更若しくは特例風俗営業者の構造等の変更あったときは公安委員会に届出書の提出を要する。

○許可証

 許可証は営業所の見やすい場所に掲示し(第6条),これを滅失・亡失したときは速やかに再交付を受けなければ ならない(第5条第4項)。また記載事項に変更が生じた時は書換えを受けなければならない(第9条第4項)。なお返納事由に該当することとなったときは遅滞なく返納しなければならない(第10条)  

●返納事由(第10条第1項各号)
・営業を廃止したとき   
・許可を取り消されたとき   
・再交付を受け,亡失・滅失した許可書を発見・回復したとき  

○特例風俗営業者(第10条の2)

 認定事由のすべてに該当する場合で,営業者の申請により認定できる。認定により認定証が交付される。

●認定事由(第10条の2第1項各号)    
・許可後10年を経過している    
・10年以内に本法に基づく処分を受け又は現に受ける事由がない    
・本法に基づく条例の遵守の状況が優良な者  

○名義貸しの禁止(第11条)

 許可を受けた者は自己の名義で他人に営業させてはならない。

◎届出(第4章)

 性風俗特殊営業を営もうとする者はその種別に応じて営業所ごとに公安委員会に届出書を提出しなければならない。これは風俗営業の許可と大きく異なるところで,届出により営業する事が可能で,行政庁の意思が介在しない。つまり届出が受理された時点で適法な営業となり,許可証の交付などを要しない。届出は行政庁が必要的に受理しなければならない。但し届出書の瑕疵(不備),つまり形式上の用件に適合しないときは受理は拒否される。この場合瑕疵を補正して届け出ればよい。

 行政手続法第37条(届出)
 届出が届出書の記載事項に不備がないこと,届出書に必要な書類が添付されていることその他法令に定められた届出の形式上の用件に適合している場合は,当該届出が法令により当該届出の届出先とされている機関の事務所に到達したときに,当該届出をすべき手続き上の義務が履行されたものとする。

  ○手続(第27条第1項各号,第31条の2第1項各号及び第31条の7第1項各 号)

 公安委員会に必要事項を記載した届出書を提出する。

●届出書記載事項    
☆共通する記載事項     
・氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては,その代表者の氏名     
・営業所(事務所)の名称及び所在地     
・性風俗特殊営業の種別

☆無店舗型性風俗特殊営業及び映像送信型性風俗特殊営業共通の記載事項     
・営業につき広告等に使用する呼称
   
☆店舗型性風俗特殊営業特有の記載事項     
・総理府令で定める事項    

☆無店舗型性風俗特殊営業特有の記載事項     
・客の依頼を受ける方法     
・電話番号その他客の依頼を受ける業務を行う場所を表示する事項    

☆映像送信型性風俗特殊営業特有の記載事項     
・映像伝達の用に供する電気通信設備(著作権法に規定する自動公衆送信装置,つまりサーバ)を識別するための電話番号その他これに類する記号(アドレス)であって,映像伝達の際に用いるもの     
・自動公衆送信装置(サーバ)が他の者が設置する場合(プロバイダ等)は,設置者の氏名又は名称及び住所   

●相続

 風俗営業に関しては相続(法人にあっては合併による営業の承認)の規定があるが,性風俗特殊営業では相続の規定は存在しない。
    
民法第896条(相続の一般的効力)     
 相続人は,相続開始の時から,被相続人の財産に属した一切の権利義務を継承する。但し,被相続人の一身に専属したものは,この限りではない。

 権利義務については一切を相続できるのだから当然営業する権利も相続できるのではないか,と考える方もいるかと思うが,性風俗特殊営業については,届出のみで何ら許可を要せず,営業に関し,そもそも相続する権利も,一身専属の権利も存在しない。(民法,商法上の権利義務はまた別の問題である)単に届出書を提出すればよい。もちろん営業所等の不動産(所有権・地上権等の物権,賃借権等の債権)や備品等の動産,営業上の債権の相続は妨げられない。(法人名義であればそもそも相続財産ではないから,相続の対象とならない)

○営業の廃止又は変更

 性風俗特殊営業の種別の変更を除き,届出事項に変更があった場合又は営業を廃止したときは総理府令で定める事項を記載した届出書の提出を要する。


4 規制及び遵守事項等(第3章,第4章)

 本法の核心部分,旧法では対応できなかった部分も現状に応じ,また,将来へ対応するため,改正により更に詳細に規定されている。

◎風俗営業に関するもの(第3章)

 ○遵守事項

  
・店舗の構造・設備の維持に務める(第12条)
  
・営業時間は日出時から午前零時(ただし都道府県の条例で定める地域内に限り午前1時)までとする。また必要があるときは,都道府県は,条例により地域を定めて営業時間を制限できる(第13条)
  
・店舗内の照度を国家公安委員会規則で定める数値以下にしてはならない(第14条)
  
・都道府県の条例で定める数値以上の騒音・振動を生じさせてはならない(第15条)
  
・周辺の風俗環境を害するおそれのある方法で,広告・宣伝をしてはならない(第16条)
  
・国家公安委員会で定める種類の料金を客の見やすいように表示しなければならない(第17条)
  
・店舗の入り口に18才未満立入禁止(20時以降立入禁止)の表示しなければならない(第18条)
  
・従業員でなくなった場合に直ちに債務(借金)を返済することを条件とし,支払能力を超える高額な債務を負担させてはならず,また,支払能力を超える高額な債務を負担させた従業者の旅券・運転免許証等を保管し,第三者に保管させてはならない(第18条の2)
  
・国家公安委員会規則で定める遊技料金・賞品価格の最高限度に関する基準に従わなければならない(第19条)
  
・著しく射幸心(ギャンブル欲?)をそそるおそれのある遊技機を設置してはならない(第20条)
  
・その他,都道府県(市区町村ではない)は条例により必要な制限を定めることができる(第21条)
 

 ○禁止行為(第22条各号)   

・客引き   
・18才未満の接待等   
・午後10時以降の18才未満の使用   
・18才未満の者の(20時以降の)店舗への立入   
・20才未満の者への酒類・タバコの提供  

 ○遊技場営業者の禁止行為(第23条)

  省略

 ○管理者(第24条)

  営業者は店舗ごとに業務の実施を統括管理する管理者一人を選任しなければならない。(第1項)    

●管理者の欠格事由(第2項各号)    
・禁治産者,準禁治産者,復権を得ていない破産者
   
・1年以上の懲役若しくは禁錮の刑に処せられ執行を終わり,又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者
     
・特定の罪により1年未満の懲役若しくは罰金の刑に処せられ執行を終わり,又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者
   
・いわゆる暴力団関係者
   
・精神病者又はアルコール,麻薬,大麻,あへん若しくは覚せい剤の中毒者(原文のまま)
   
・風俗営業の許可を取り消され,取消しの日から五年を経過しない者
   
・許可の取消しのための聴聞等の期日が公示されたのち許可証を返納し,その日から5年を経過しない者
   
・許可の取消しのための聴聞等の期日が公示されたのち許可証を返納し又は合併により消滅した法人で公示の日前60日以内に役員であった者でその日から5年を経過しない者
   
・未成年者

  

●管理者の職務(第3項及び第4項)    
店舗における業務に関し,営業者又はその代理人,使用人,従業者に対し必要な助言又は指導を行い,その他国家公安委員会規則で定める必要な業務を行う。営業者等はその助言を尊重し,従業員等はその指導に従わなければならない(営業者は「尊重」,従業員は「従う」との違いに注意)     

  

●その他管理者に関する事項(第5項ないし第7項)    
 公安委員会は欠格事由に該当すると認めたとき又は法令等に違反した場合で,その情状により不適当と認めたときは営業者に解任を勧告できる。(法令等に違反しても情状により勧告されることはない場合もあると解釈できる。これは管理者といえども営業者の従業員である以上酌むべき事情もあるであろうという配慮によるものと思わ れる。また「勧告できる」に留まる点も注意が必要)
   
 公安委員会は必要と認めるときは管理者を対象に講習を行える。営業者はこの講習の通知を受けたときは講習を受けさせなければならない。

 ○指示(第24条)

 公安委員会は,営業に関し,法令等に違反した営業者に対し,善良な風俗若しくは清浄な風俗環境を害し,又は少 年の健全な育成に障害を及ぼすおそれがあると認めるときは,その行為を防止するため必要な指示ができる。

 注!)指示できるのは「法令又は風営法に基づき条例に違反した場合」が必要的条件であり,単に道徳的に悪質と思われる程度では,本条に基づく指示はできないと解するのが相当。

 ○営業の停止等(第25条)

  公安委員会は以下の場合は許可を取り消し,6月を超えない範囲で期間を定め営業の全部若しくは一部の停止を 命ずることができる。また,許可の取り消し若しくは停止を命ずるときは,その店舗を用いて営む飲食店営業についても,6月を超えない範囲で期間を定め(停止の場合はその停止期間)全部又は一部の停止を命ずることができる。

・法令等に違反した場合で「著しく」(前条「指示」の要件にはない文言)善良な風俗若しくは清浄な風俗環境を害し,又は少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれがあると認めるとき(法令等に違反しているのが必要条件)   
・本法に基づく処分に違反したとき   
・条件(附款)付許可の条件に違反したとき
 善良な風俗若しくは清浄な風俗環境を害し,又は少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれがあると認める場合は「指示」に留まり,それが「著しい」場合に限り,停止又は取消の措置が執られる。指示又は停止若しくは取消のいずれの場合もその処分は行政庁の裁量により(裁量行為),必要的に為される訳ではない。

◎店舗型性風俗特殊営業に関するもの(第4章第1節第1款)

 ○禁止区域

  以下の区域が営業を禁止される。ただし,本法施行又は適用時にすでに届出書を提出し,営業している場合は適  用されない。(つまり,h10/4/1より前に届出をしているときは本法による区域規制は受けない。いわゆる法不遡及の原則である)(第28条第3項)

●絶対的禁止区域(第28条第1項)    
本法施行後は,例外なく営業が禁止される区域,以下の施設等の周囲200メートルの区域が営業を禁止される。    
・一団地(一塊りと言った意味)の官公庁施設    
・学校    
・図書館    
・児童福祉施設    
・善良な風俗若しくは清浄な風俗環境を害する行為,又は少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれがある行為を防止する必要のあるものとして都道府県の条例で定めるものの敷地

●特例的禁止区域(第28条第2項)  
 都道府県が,善良な風俗若しくは清浄な風俗環境を害する行為,又は少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれがある行為を防止るため必要のあるときは,条例により,地域を定め禁止する区域。
 原則的には禁止区域ではないものの,都道府県の条例により,例外的に禁止される区域である。   
 ○営業時間(第28条第4項)

  都道府県は,必要があるときは条例により深夜(午前零時から日出時まで)における営業時間を制限することができる。風俗営業は午前零時から日出時までの時間を本法により一律に,原則的に禁止しているが(例外として条例で定  める時若しくは午前1時),店舗型性風俗特殊営業は原則として制限を受けず,例外的に(条例により)制限を受けることになる。

 一見すれば風俗営業より緩やかな規制に見えるが,実は規制の明文化を避け,それを条例に委任することにより,地域の事情や社会の変化に柔軟に対応し,かつ,いかようにも規制を変更できる(条例の改正で済む,法律の改正は国会の議決が必要で柔軟性に欠ける)のであり,実際は規制する側にとって有用な立法技術である。

  また法令の七不思議の一つに「原則と例外の逆転現象」がある。例外が原則的な扱いを受け,原則が例外的な扱 いを受けることが良くあるのである。本規定もその仲間となるであろう。

 ○広告等の規制

●制限される区域又は地域(広告制限区域等)   
・絶対的禁止区域(第28条第5項第1号イ)   
・特例的禁止区域のうち条例で定める地域(第28条第5項第1号ロ)

●制限される広告又は宣伝の方法
・看板,立看板,はり紙,はり札(第28条第1項本文)  
・広告塔,広告板(第28条第1項本文)   
・建物等に掲出・表示されたもの(第28条第1項本文)   
・以上に類するもの(第28条第1項本文)   
・人の住居等にビラ等(ビラ,パンフ又はこれらに類する文書図画)を配り差し入れること(第28条第5項第2号)   
・ビラ等を頒布すること(第28条第5項第3号)   
・その他清浄な風俗環境を害するおそれのある方法(第28条第5項第6号)

●広告制限区域に拘わらず制限される広告等   
・人の住居等(18才未満の居住していないものを除く)にビラ等(ビラ,パンフ又はこれらに類する文書図画)を配   り差し入れること(第28条第5項第2号,第4号)   
・18才未満の者にビラ等を頒布すること(第28条第5項第3号,第5号)   
・広告,宣伝をするときは18歳未満の者が店舗に立ち入ってはならない旨明示する。(第28条第8項)   
・店舗の入口に18歳未満立ち入り禁止の表示をしなければならない。(第28条第9項)

 ○禁止行為

  
・接客従業者に対する拘束的行為の規制(第28条第10項)
  
・客引き(第28条第11項第1号)
  
・18歳未満の者を客に接する業務に従事させること
 禁止されるのは接客業務のみであり厨房等での業務を行わせることに問題はないが,児童福祉法第34条「禁止行為」の第4の3号,5号に注意する必要がある。特に15歳未満を使用するときは要注意(第28条第11項第2号)
  
・18歳未満の者を客として立ち入らせこと(第28条第11項第3項)
  
・20歳未満の者に酒類・タバコを提供すること(第28条第11項第4項)
  
禁止行為は児童福祉法と重複する部分があるので注意を要する。例えば,18歳未満の者(児童福祉法上は児童 という)を接客業務に従事させたときは本法により処断されるのみだが,これに淫行させた場合(風俗業におけるいわゆる「サービス」はすべて淫行とみなして間違いない)は児童福祉法第34条第6号を適用することも可能。児童福祉法の罰則は,本法の罰則よりはるかに重い。

 ○指示(第29条)

  風俗営業と同趣

 ○営業の停止等

  
●営業の全部又は一部の停止(第30条第1項)

 以下の場合は当該施設を用いての営業につき,8月(風俗営業は6月であることに注意)を超えない範囲を定めて,その全部又は一部の停止を命ずる事ができる。
・本法に規定する罪に当たる違法行為をしたとき    
・刑法第174条(公然わいせつ)175条(わいせつ物頒布等)182条(淫行勧誘)の罪に当たる違法行為をしたとき    
・売春防止法第2章に規定する罪に当たる違法行為をしたとき。    
・政令で定める,少年の健全な育成に障害を及ぼす重大な不正行為をしたとき    
・本法に基づく処分に違反したとき   

●営業の廃止(第30条第2項)

 禁止区域等で営業している者に対し,停止の命令に代えて,当該施設を用いて営む営業の廃止を命ずることが  できる。(理論上,停止の命令をするのも可能)
 停止等を命ずるときは8月を超えない(停止のときはその期間)範囲で,浴場業営業,興行業営業又は旅館業営業 についてその全部又は一部の停止を命ずることができる。(第30条第3項)
 
 また,停止等の処分をされるのは「当該施設」であり,系列店等他の店舗も同様の処分がなされるわけでは,必ず しもない。もちろん系列店の経営者自身が違法行為等を行った場合にはすべての店舗が「当該施設」となる場合もありうる。  
 さらに一つの注意すべき点として,停止事由の犯罪行為に伴う共犯の問題がある。犯罪の実行者が従業者で単独 犯であれば,停止事由に該当しないが,営業者がこれの共犯とされた場合はどうか?  
 刑法第60条(共同正犯),61条(教唆)は正犯であり停止事由に当然に該当するが,62条(幇助)は従犯であり正 犯と同様の扱いとするのか否か?やはり停止事由に該当することとなるだろ。従犯といえども正犯の犯した本犯と同様の罪状で起訴される以上,やはり刑法第174条等に反してる言えるわけであり残念だが該当する。起訴状を見ていただければ分かるが(そんな機会はないであろうし,あれば一大事だが)適用罰条は本犯の罰条(147条等)に並 び62条が記載されるはずである。
 
 なお,停止等の処分は,「営業している者」に対し「当該施設を用いての営業」を制限するのであり,第三者に施設の物権を移転し又は賃借権若しくは物権を設定し,その者が当該施設を用いての営業並びに営業している者が他の施設(「当該施設」以外の施設)を用いて行う営業については,法理論上制限されないと解することができる。もちろん そのあたりは政令及び国家公安委員会規則できっちり押さえているとは思うが。なお停止等は裁量行為である。

●標章

 公安委員会は,停止を命じたときは,当該命令にかかる施設の出入口の見やすい場所に標章を張りつける(第31条第1項)。この標章は,何人も破壊し汚損し,また,期間を経過した後でなければ取り除くことはできない(第31条第4項)。なお,以下の場合は営業者は標章を取り除くことを申請することができる。この申請があったときは,公安委員会は標章を取り除かなければならない(第31条第2項本文)。

   

・当該施設を店舗型性風俗特殊営業以外の用に供しようとするとき(第31条第2項第1号)
   
・当該施設を取り壊すとき(第31条第2項第2号)
   
・当該施設を増築,改築するためやむを得ないと認められる理由があるとき(第31条第2項第3号)

 なお,標章を貼付された施設を買い受けた者その他当該施設につき使用する権限を有する第三者は国家公安委員会規則に定めるところにより,標章を取り除くことを申請できる。この場合も公安委員会は標章を取り除かなければならない。(第31条第3項)いずれの場合も申請があれば,公安委員会は必要的に標章を取り除かなければならず,裁量の余地はない,いわゆるそく覊束(きそく)行為である。
◎無店舗型性風俗特殊営業に関するもの

 ○禁止区域等(第31条の3第1項)

  禁止区域及び地域は店舗型性風俗特殊営業に準ずる。

 ○広告等の制限(第31条の3第1項)

・広告,宣伝をするときは18歳未満の者が客となってはならない旨明示する
  
・その他広告及び宣伝の禁止される区域等及び方法は店舗型性風俗特殊営業に準ずる。

 ○禁止行為   

・接客従業者に対する拘束的行為の規制(第31条の3第1項)
  
・18歳未満の者を客に接する業務に従事させること(第31条の3第2項)
  
・18歳未満の者を客とすること(第31条の3第2項)

 ○指示

  
・風俗営業と同趣(第31条の4第1項)
  
・広告制限等区域内において,はり紙,立看板等を表示した場合で,違反行為当時の事務所を知る事ができないときは,管轄公安委員会はこれを警察職員に除去させることができる。(第31条の4第2項)

 ○営業の禁止(第31条の5)  

 以下の場合は営業につき,8月を超えない範囲を定めて,その全部又は一部を営んではならないことを命ずる事ができる。処分権を有するのは違反行為時の事務所の所在地を管轄する公安委員会である。

 ただし,指示,禁止ともに,処分移送通知書の送受があったときは,処分権は送付先公安委員会が有し,送付元公安委員会は処分権がなくなる(第31条の6)。
  

・本法に規定する罪に当たる違法行為をしたとき   
・刑法第174条(公然わいせつ)175条(わいせつ物頒布等)182条(淫行勧誘)の罪に当たる違法行為をしたとき
・売春防止法第2章に規定する罪に当たる違法行為をしたとき。   
・政令で定める,少年の健全な育成に障害を及ぼす重大な不正行為をしたとき   
・本法に基づく処分に違反したとき
  

 本営業の場合,風俗営業の許可の取消又は店舗型性風俗特殊営業の廃止のように,営業そのものを存続させないという規定は存在しない。

◎映像送信型性風俗特殊営業に関するもの

 ○広告等の規制(第31条の8第1項)

  無店舗型性風俗営業に準ずる

 ○禁止行為

  
●18歳未満の者を客としてはならない(第31条の6第2項)
  
●18歳未満の者が通常利用できない方法による客の依頼のみを受ける場合を除き,電気通信事業者(NTT等)に対し,当該映像の料金(Q2等の情報料)の徴収を委託してはならない(第31条の8第3項)

 アクセスするのに,18歳未満の者に利用できない方法を用いていれば(そのような方法があるかは別問題として)情報料の徴収を委託できる。また,電気通信事業者以外であれば原則として徴収の 委託ができる。(信販会社等)

 

●客が18歳以上であることの証明又は18歳未満の者が通常利用できない方法により料金を支払う旨の同意を得た後でなければ映像を伝達してはならない(第31条の8第3項)
  
 良くある「あなた18歳以上ですか?Yes or No」の方法は証明としては弱いと思えるが・・・本法の目的から言えば(業者の保護が目的ではない,少年の健全な育成が目的なのだ,これは大原則)これは証明にならないと言っていいのではなかろうか。
   
 私見としてこの方法は行政処分の対象になる可能性が全くないわけではないと考える。そのため,ほとんどのサイトがクレジットカードによる支払を選択しているのは賢明な措置である。これは後段の「18歳未満の者が通常支払う事のできない方法で料金を支払う旨の同意を得る」に該当し,本条文の禁止行為をクリアするに必要にして充分な方法である。
 ここで問題となるのがアクセスして最初に現れる,トップページの画像等である。ここに規制対象の画像があればこれは問題である。なんら年齢を確認せず,かつ,支払い方法の確認もせず映像を送信していることになり,たとえメインページにアクセスできなくても厳密に解釈すればその時点で違法な行為となる。これで行政処分を受ける可能性は非常に低いが,法理論としては可能であることを知っておいていただきたい。

 

●自動公衆送信装置(サーバ)の全部又は一部を営業者に提供しているサーバの設置者(プロバイダ)は記録媒体(ハードディスク等)に営業者がわいせつな映像の記録をしたと知ったときは,送信防止のため必要な措置を講ずるよう努力しなければならない(第31条の8第5項)

 これは営業者(サイトの運営者,管理者)ではなく,プロバイダ等に課せられた「努力義務」若しくは「努力目標」とも  言うべき規定である。なお,設置者が送信防止の措置を講じなければならないのは「わいせつ」な画像だけである。これは刑法の「わいせつ物頒布等」に該当する映像のことである。規制対象の画像のことではないので念のため申し添える。

 ○指示等

  
●営業者に対しなされる指示等(第31条の9第1項)

 本法又は本法に基づく命令若しくは条令の規定に違反したときは,違反行為時の事務所を管轄する公安委員会は必要な指示ができる。

●設置者(プロバイダ)に対しなされる勧告(第31条の9第2項)

 営業者が客にわいせつな画像を見せた場合において,送信防止のために必要な措置を講ずる義務の遵守を怠っていること認めるときは,当該設置者の事務所を管轄する公安委員会は必要な措置を執るべきことを勧告できる。

  

 為しうるのは「勧告」であり,指示,命令等はできない。指示,命令等はそれに反すればさらなる行政処分又は刑罰が課せられるが,勧告は行政処分ではなく,行政指導でありなんら法的拘束力をもたない。

  

行政手続法第32条第1項(行政指導の一般原則)   
 行政指導にあっては,行政指導に携わる者は,いやしくも当該行政指導機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されることに留意しなければならない。

  

 上のとおり行政指導(勧告)は行政処分(指示.命令等)とその性格を大きく異にし,いわば行政庁の国民に対する「お願い」と言った性格のものである。勧告に従うか否かは設置者の意思により,またそれのみによって実現されるものであり,当然に自力執行力(義務の履行がなされないとき,行政庁がこれを強制し,もって義務の履行を実現させること)は有せず,勧告内容を行政庁が一方的に実現することはできない。
なお,勧告に反した場合の,罰則若しくは命令等は規定されていない。

 ○命令(第31条の10)

 営業者が,18歳未満の者が通常利用できない方法による客の依頼のみを受ける場合でないのに,電気通信事業 者に対し,当該映像の料金の徴収を委託したとき又は客が18歳以上であることの証明又は18歳未満の者が通常利用できない方法により料金を支払う旨の同意を得ていないのに映像を伝達したときは,違反行為時の事務所の所在地を管轄する公安委員会は,18歳未満の者を客としないため必要な措置を執ることを命ずることができる。
 ただし,指示,禁止ともに,処分移送通知書の送受があったときは,処分権は送付先公安委員会が有し,送付元公安委  員会は処分権がなくなる(第31条の11)。

 必要な措置を命じれるのだから,現状(18才未満が客となっている現状)を是正する措置を命じることは当然として,営業の禁止や廃止(現状を是正する見込みがないと判断すれば)を命じることもまた許されると解される。

 他の性風俗特殊営業に対する行政処分は,営業の禁止や停止,廃止等条文で明確に規定されているが本営業に関する行政処分は「必要な措置」とされ,行政庁にかなりの裁量(便宜裁量又は自由裁量)が与えられている点には 注意すべきである。
 これはインターネットがいまだ進化を続けているものであり,予見しえない状況にも臨機に対処するために裁量の範囲を広げているためと思われる。

 なお,本法により規制を受けるのは「有料」のサイトであり,無料のサイトは対象外である。一部に見られる広告料収入で運営しているサイトは一見無料であり,規制の対象外と思えるが,やはり広告料による収入がある以上,「営業」しているとみなすべきであると考える。
 特に利益確保が目的ではないだろうが,恒常的な収入がありそれをもって 運営している以上営業と言える。営利ではないと言えないこともないが,アクセス回数の増加を呼び掛け,さらなる広告料収入の増加を目的にしている以上,全く営利ではないと言うのは少し厳しい気がする。
 実際に利益を受けているか否かは問題ではない,世の中赤字企業はいくらでもあるのだ。その行為を行う意思の問題なのだ。ただこれは自分の私見であり,実際に裁判所がどう判断するかは未知数である。

◎接客業務受託営業に関するもの(第4節)

 本営業は許可,届出等の規定が無い。つまりいつでも自由に営業をすることが可能でまたいつでも自由に営業を止めることも可能。本法により規制される営業の中でも最も自由度の高い営業形態である。

 ○禁止行為

  受託接客従業者に対する拘束的行為の規制(第35条の2)

 ○指示(第35条の3第1項)

  営業者が禁止行為(拘束的行為)をした場合で,善良な風俗若しくは清浄な風俗環境を害し,又は少年の健全な育 成に障害を及ぼすおそれがあると認めるときは,事務所の所在地の管轄公安委員会は,その行為を防止するため必要な指示ができる。

 指示することができるのは,禁止行為(従業者に対する拘束的行為)を犯し,かつ,風俗環境を害す等した場合であり,そのいずれか一方のみであれば指示はできない。

 ○命令(第35条の3第2項)

  以下の場合は,6月を超えない範囲を定めて,接客業務受託営業に該当する営業の全部又は一部を営んではな らないことを命ずる事ができる。

  
・刑法第223条(強要)に当たる違法行為をしたとき
  
・政令で定める重大な不正行為をしたとき
  
・指示に反したとき

◎深夜における飲食店営業の規制等(第4章第2節)

 省略

◎興行場営業の規制(第4章第3節)

 公安委員会は興行場営業者等がその営業に関し,刑法第174条(公然わいせつ)175条(わいせつ物頒布等)の罪を犯した場合は,その営業者に対して,当該施設を用いての営業につき,6月を超えない範囲を定めて,その全部又は一部の停止を命ずる事ができる。(第35条)

 これは店舗型性風俗特殊営業に該当しない興行場(映画館やライブハウス等)に対する規制である。また通常衣服を脱ぐことはないがそれに近いようなショーを行っている風営法外におかれる興行場に対する一つの牽制的効果を狙っているか,若しくは脱法行為防止のための規定である。


5 営業の監督

◎監督(第5章)

○従業者名簿(第36条)

 風俗営業,映像送信型性風俗特殊営業を除く性風俗特殊営業,飲食店営業を営む者は,営業所(事務所)ごとに 従業者名簿を備え,従事する者の住所,氏名及びその他総理府令で定める事項を記載する。

○報告(第37条第1項)

 公安委員会は,この法律の施行に必要な限度において,風俗営業者,性風俗特殊営業者,接客業務受託営業者 等に対し,その業務に関し報告又は資料の提出を求めることができる。

○立入り(第37条第2項ないし第4項)

 警察職員は,この法律の施行に必要な限度において,風俗営業又は店舗型性風俗特殊営業の営業所(個室等を設ける営業所にあっては客が在室する個室等を除く)に立ち入ることができる。その際警察職員は身分を示す証明証を携帯し,関係者に提示しなければならない。

 なお本法に規定される立入りの権限は犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
  本法は立入りにつきなんら時間的な制限が加えておらず(他の法令では夜間は禁止されている事が多い)また,立 入りにつきなんらの許可も要せず,突き詰めれば警察機関の思う時に思うままに立入りを実施することができる,何の前触れもなく突然にである。
 ただし,立入りできるのは警察職員(必ずしも警察官でなくてもよく,いわゆる警察事務 吏員[制服を着用しない行政職地方公務員,警察官は高級幹部を除き公安職地方公務員]であっても可)に限られ,その警察職員といえども,無制限に立入りが許されているわけではない。個室等に客がいるときと犯罪捜査の場合は立ち入ることができない。この場合は裁判所が発付する「捜索差押許可状」等の令状が必要となる。

 わが国の刑事訴訟法は「令状主義」をとっており,捜査につき強制力を行使するには令状によらなければならず,いやしくも本法 の規定を利用しての犯罪捜査を第4項で禁じている。
 あえて明文化されているのは,その恐れが大きいが故の現れ であり,捜査機関も慎重にならざる得ないであろう。

 あくまで立ち入りできるのは「本法の施行に必要な限度」であり,本法違反の犯罪捜査といえども令状主義が大原 則であり,本規定に基づく立ち入りにより得られた証拠は,目前の事実除き,犯罪の立証のための証拠として利用す ることはできない。もし仮に,検索・検束をすれば違法な証拠となり証拠から排除されてしまう。
ただし,立ち入りにより現行犯逮捕され,それによる捜索差押に基づき得られた証拠は,その証拠能力を否定されない。また,立入りと同時に令状を得ていれば当然に適法なものとなる。

  刑事訴訟法第220条(令状によらない差押え・捜索・検証)
 第1項  検察官,検察事務官又は司法警察職員は第199条〔逮捕状による逮捕〕の規定により被疑者を逮捕する場合又は現行犯人を逮捕する場合で必要があるときは,左の処分をすることができる。第210条〔緊急逮捕〕の規定により被疑者を逮捕する場合において必要があるときも,同様である。

 
第1号 人の住居又は人の看守する邸宅,建造物若しくは船舶内に入り被疑者の捜索をすること。  
第2号 逮捕の現場で差押,捜索又は検証すること。  
第2項  省略  
第3項  第1項の処分をするには,令状は,これを必要としない。  
第4項  省略

 いかな令状主義と言っても,立入りを犯罪捜査に利用させないと言っても,立入りにより犯罪を現認した司法警察による現行犯人の逮捕を否定しているわけではない。

 立入りはあくまで「立入りだけ」であり,店舗内の捜索,何らかの作為義務(命令により何かを行うこと)又は不作為 義務(命令により何かをしないこと)を課すこと等が許されているものではない。今後この立入りによる摘発等は問題 が生ずる可能性が極めて大きいといえる。
  なお,立入りの際の身分証明の提示は,立入りを受ける者から請求がなくとも,必然的にしなければならない。


6 罰則規定

◎罰則(第7章)

 本法における罰則規定は以下のとおりである。

 なお,18歳未満の者を接客等業務に就かせた場合は過失による場合を除き,年齢を知らなかったことを理由に処罰免れることはできない。(第49条第4項)
 基本的に犯罪の構成要件として,犯罪を実行しようとする意思すなわち主観的要件が必要である。一般的に言う「故意」である。これが欠けるときは犯罪として成立しえない(責任阻却事由)。そして過失は原則として責任阻却事由に該当する。(例外的に刑法等で定められた過失犯は該当しない)

 例えば年齢を単に口頭で確認した程度では処罰を免れないと言うことである(これは過失とは言えないなぜならば一般的な注意義務,つまり次のような注意義務を怠っているからである)。その場合,運転免許証や国民健康保険被保険者証,戸籍謄・抄本,住民票等の類で年齢が確認できるもので確認しなければならない。万が一これらを偽造,不実の記載等がなされていてもこれは処罰の対象にならない。(そこまでの注意義務は要請されていないと見るのが妥当)当然民間企業等の発行した会員証やガードの類は公信力を持ち得ないから何らの証明とはならいないと考えた方がよい。

 また,営業者若しくは管理者の監督・監視の間隙を付かれ(知らぬ間に),客に強引に引っぱり出されたり,女の子が勝手に接客等の業務に就いた場合は,注意義務はあるがそれを怠った過失となりやはり処罰の対象とはならない。もちろん直ちに中止させる措置を執らなければならないことは言うまでもない。

 なお,いずれの罰則においても,処罰対象者が法人に属するときは,その法人は罰金刑が科せられる(第50条)。

 ○1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金,又は併科(第49条第1項)

・無許可営業(風俗営業)
・不正な許可又は法人の合併による営業の承認(風俗営業営業)
・名義貸し(風俗営業)
・営業停止違反(風俗営業)
・営業停止・廃止違反(店舗型性風俗特殊営業)
・営業禁止違反(無店舗型性風俗特殊営業)
・営業停止違反(飲食店営業)
・営業禁止違反(接客業務受託営業)
 ○1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金(第49条第2項)

  
・遊技機規制違反(風俗営業)   
・風俗環境浄化協会職員の守秘義務違反  
○6月以下の懲役若しくは50万円以下の罰金(第49条第3項)

  
・未承認の設備・構造等の変更(風俗営業)   
・不正な設備・構造等の変更の承認(風俗営業)   
・禁止行為違反(風俗営業)   
・遊技場経営者の禁止行為違反(風俗営業)   
・禁止区域違反(店舗型性風俗特殊営業)   
・禁止行為違反(店舗型性風俗特殊営業)   
・18歳未満の接客業務従事(接客業務受託営業)   
・年少者利用防止命令違反(映像送信型性風俗特殊営業)
 ○30万円以下の罰金(第49条第5項)

  
・申請書の虚偽の記載(風俗営業)  
注!)この場合,刑法第157条(公正証書等原本不実記載等)の罪に問われることもあり得る。以下申請書・届出書の虚偽の記載について同様である。
  
・無届の構造等の変更又は届出書の虚偽の記載(風俗営業)   
・認定申請書の虚偽の記載(特例風俗営業者)   
・遊技場経営者の禁止行為違反(風俗営業)   
・管理者の未選任(風俗営業)   
・無届営業(性風俗特殊営業)   
・営業届出書の虚偽の記載(性風俗特殊営業)   
・従業者名簿の不備(風俗営業,映像送信型性風俗特殊営業を除く性風俗特殊営業)
 ○20万円以下の罰金(第49条第6項)

  
・許可証の未掲示(風俗営業)   
・相続・合併時の許可証の未書換(風俗営業)   
・無届の軽微な設備・構造等の変更又は届出書の虚偽の記載(風俗営業)   
・許可証の返納義務違反(風俗営業)   
・認定証の返納義務違反(特例風俗営業者)   
・廃止の未届出(映像送信型性風俗特殊営業を除く性風俗特殊営業)   
・標章毀損(共通)   
注!)この場合,刑法第96条(封印等破棄)の罪に問われることもあり得る。
  
・報告・資料提出の拒否等(共通)   
・立ち入りの拒否等(共通)   
注!)この場合,その立ち入りを「暴行」又は「脅迫」で妨げたときは,刑法第95条第1項(公務執行妨害)に,袖の下を渡した場合は,刑法第198条(贈賄)の罪に問われることもあり得る。蛇足ながら「風俗環境浄化協会」 の職員は「みなし公務員(第39条第6項)」であり,これへの袖の下、鼻ぐずりも贈賄となり,刑法犯となる。   

 ○10万円以下の科料(第50条)

  
・相続・合併の不承認の場合の許可証返納義務違反(風俗営業)   
・営業の相続・引継をしない場合の許可証返納義務違反(風俗営業)   
・営業の相続・引継をしない場合の認定証返納義務違反(特例風俗営業者)


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