by 黒川洋介氏
こんにちは。
風俗産業・経済研究室での研究テーマのひとつに「欲動経済学」があります。
本研究ノートでは、欲動経済学の応用面から、風俗店のマーケット戦略に有効な「ポイント還元」サービスについて考察を行ってみたいと思います。
なお、本研究室では「風俗産業におけるマーケティングの目的は、販売促進を不要にする事である」と考えています。
1.はじめに
日本ピンサロ研究会では、「風俗依存症候群」の行動研究から「セーラー係数」(参考1)にアダム・スミスの経済モデルを当てはめ、男は「性欲の充足を利己的に追求するものであり、いい女とHするために、1円でも安く費用対効果を計算して合理的に判断し行動する」と考えていました。これを「経済モデル」と定義しています。
今まではこの経済モデルが常識であり、風俗店では顧客獲得手段のひとつとして、標準コースよりも安く見せるお試しコースやショートコースの設定を行ったり、風俗雑誌や無料紹介所での割引券発行等のサービスが行われています。
その為に、一度来店されただけでは薄利である為、経済モデルにて仮説されている時間指向原則がはたらく(参考2)、本指名客やリピート客にて利益を確保しようとする経営戦略が立案され、販売促進策としての支出、つまりマーケティングコストは新規顧客の獲得に重点的に配分されているのが現状です。
2.勘定より感情
風俗店における固定客(常連客)の確保は、嬢の容姿やメール・アフターでの努力と根性による差別化に期待され、一般の流通サービス業では当たり前の「お店として囲い込む」サービス戦略がなされていないのが実情です。
あえて言うなら、従来の経済モデルでは、本指名やリピートで価格が上昇し割引サービスも受けられないのに、通いつめてしまう男の行動を説明できなかった事から、有効なマーケティングが打てなかったのでは無いかと考えています。
男はなぜ、嬢(お店)にとって太い客になるのでしょうか。
日々更新される日ピン研の体験レポートを拝読すると、男の嗜好は複雑であり、気まぐれであり、なおかつその場の感情・性欲に突き動かされて、えてして合理的な判断が出来ていない事が判ります。
割引価格で付いた嬢がオキニになり時間指向原則に陥った場合、アンカー効果(参考3)により2回目以降の価格上昇を合理的に計算できなくなり、無意識に曖昧な判断を下してしまうのではないかと、心理面からその行動を仮説すると、太い客の発生が説明できます。
この顧客の感情的な行動は、従来の経済モデルでは説明できませんでした。
この様な従来の経済モデルでは説明できない、非合理的な男の感情行動を類型化し「欲動モデル」として焦点を当てて研究するのが「欲動経済学」です。
3.非合理マーケティング
風俗店では、スタンプカードを初め様々なサービスが実施されていますが、家電量販店でしのぎを削っている「ポイント還元」サービスを取り入れている店舗は見当たりません。
ポイント還元サービスとは、表示価格の数%を購入者にポイントとして還元し、次の購入の際に1ポイントを1円としてその店での購入に利用できる制度です。「20%ポイント還元は、20%割引と同じ」と実際よりも大きく割引している様に錯覚させる効果(参考4)があります。
知らなければ客も満足する、この錯覚を引き出す「ポイント還元」サービスを風俗店で取り入れない理由はありません。
ポイント還元サービスを導入した場合、風俗店側のメリットは以下の様になります。
(1)ポイント分の金額は無利子でお客から借りているのと同じ
例)60分20,000円コースの場合
20%割引では16,000円ですが、20%ポイント還元では20,000円が手に入り4,000ポイント分は現金預かり
(2)ポイントを使うためにリピートする客を増やせる
(3)使われなかったり、期限切れになったポイントは、お店の利益になる
例)上記で4,000ポイントを行使されなかったら、4,000円の利益で実質は値引き無しと同じになる
ここで注意しなければならないのは、リピート客を逃がさない為に、ポイントを使った際にもポイントを付与する事です。例えば、ポイント還元率20%で4,000ポイントを使って60分20,000円コースに入った場合も、使ったポイント分を引いて客が払った現金分16,000円に3,200ポイントを付与します。
これにより、「経済モデル」を基にしたマーケット活動に見せかけて、非合理的な「欲動モデル」の常連客や本指名の客をも囲い込むのに有効なサービスが提供可能になると考えています。
店側のメリットが分かりにくいので表にします。
60分20,000円コースで、20%現金割引、20%ポイント還元で毎回使う場合と溜めてから使う場合を比較。
ポイント還元で付与されるポイントは、10位を繰り上げとします(例:16,600円で20%還元3,320ポイントは3,400ポイントにする)
現金割引 | 還元(使う) | ポイント | 還元(溜め) | ポイント | |||
1回目 | 16,000円 | 20,000円 | 4,000 | 20,000円 | 4,000 | ||
2回目 | 16,000円 | 16,000円 | 3,200 | 20,000円 | 8,000 | ||
3回目 | 16,000円 | 16,800円 | 3,400 | 20,000円 | 12,000 | ||
4回目 | 16,000円 | 16,600円 | 3,400 | 20,000円 | 16,000 | ||
5回目 | 16,000円 | 16,600円 | 3,400 | 20,000円 | 20,000 | ||
6回目 | 16,000円 | 16,600円 | 3,400 | 0円 | 0 | ||
合 計 | 96,000円 | 102,600円 | 3,400 | 100,000円 | 0 | ||
値引率 | 20% | 注(14.5%) | 16.67% |
極端なポイント還元で試行してみます。
60分20,000円コースで、50%現金割引と50%ポイント還元で比較。
現金割引 | 還元(使う) | ポイント | 還元(溜め) | ポイント | |||
1回目 | 10,000円 | 20,000円 | 10,000 | 20,000円 | 10,000 | ||
2回目 | 10,000円 | 10,000円 | 5,000 | 20,000円 | 20,000 | ||
3回目 | 10,000円 | 15,000円 | 7,500 | 0円 | 0 | ||
合 計 | 30,000円 | 45,000円 | 7,500 | 40,000円 | 0 | ||
値引率 | 50% | 注(25%) | 33.33% |
この表を見ても分かる通り、還元率が大きくなると、割引率との差が開いてきます。つまり、より強力なアンカー効果を引き出して顧客には得した気分を与えつつ、大きな利益を確保できる訳です。
来店の度にポイント還元を活用する客は煩わしいですが、将来的にはポイントを使い切れず利益を確保できる優良顧客である事が分かると思います。
4.まとめ
本研究室が提案するポイント還元サービスの基本部分
・還元率:50%
上記の通り、ホームページ上で提示すれば、錯覚効果は絶大です。経費を使って無料紹介所等で現金割引を提示するよりも効果的ではないでしょうか。
・有効期限:6ヶ月
通常のポイント還元の有効期限は、2年間が多いようですが永過ぎます。ここは敢えて6ヶ月にします。「6か月もあれば有効に使える」と思わせる事ができる上、そろそろ期限が来るからとそれ程時間を経過せずに来店を促す事もできます。しかも、仮に一見さんだったとしても、ポイントを失効する為にまるまる利益となります。
・1ポイントを1円として次回以降来店時に利用できるが、分割して使用できない
システム的にも管理が複雑になる為、上記表の通り、加算は出来るが使う際は一括で利用とします。
・ポイントを使った場合でも、払った現金分に対してポイントを付与
上記で述べた通り、リピート客を確保する為には大事な要素です。
・ポイントは、他人に譲渡できない
5.最後に
今回考察したポイント還元サービスは、確かにお店側に都合の良いカラクリになっていますが、いままでまともに割引サービスを享受できなかった固定客(常連客)や太い客には、大変ありがたいサービスとなっています。
今後は、嬢に頼るだけでなく、お店として顧客に提供するサービスで囲い込みを進め、生き残りを図る必要があると考えます。
もちろん、リピーター作りのためには接客が基本です。しかし「プレイ以外でも満足して欲しい」という気持ちも非常に重要だと思います。
以上、独断と偏見と創作の上、乱文で申し訳ありませんが報告いたします。
May a pinsalo be with you.
研究部 風俗産業・経済研究室長 黒川洋介 (H22.05.29)