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研究ノート「性欲消費経済概論」

by 黒川洋介氏


1.はじめに

 性風俗は、子孫を残す行為を、生きる糧にしたり娯楽にしたりと、人間の創意工夫の原点でもある。本稿では、性風俗が男性の精子消費に及ぼす経済的な価値に着目している。
 個々の男性は、性風俗にてサービスを提供する個々の女性(または男性、器具、右手等々)との相互依存関係を重視しながら、精子をどの様にどれくらい分配するのかという精子消費の最適配分を行っていると考えられる。その行動に価格がどの様に影響しているのかを論じている。
 なお本稿では、性風俗により得られる射精という精子を消費する行為を対象としており、男性の精神的な満足感(パンチラ喫茶とかセクキャバ等々)や女性の性欲を含めた広い意味での欲望に関しては含めていない。

2.市場のメカニズム

 価格は、性風俗市場において、買い手である精子を放出する者(以下「消費者」という)と、売り手である性風俗関連特殊営業者(以下「サービス提供者」という)とのやりとりによって決まる。一般的に、競合店が少ない地区とか商品が希少(AV女優在籍とか)では価格が上昇しサービス提供者が儲かり、競合店が多い場合や、サービス内容が簡略化または一部分(手コキとか)で構成された商品は、消費者が射精できる機会と選択の幅が増える為に価格が下がる。
 この様に、消費者とサービス提供者とは、それぞれ自分たちの利益が最大になるように行動する。そして折り合いが付いたところで市場価格が決定されていく。
 ただ、当然ながらおのおのの資源は有限である。性風俗市場が発展するには、この資源が市場を通して適切に配分される必要がある。

3.消費者のモデル

 経済社会での男性の行動原理は、究極的には「好きなことをやる、やりたいことをやる」である。
 当研究会の研究部門では、性風俗店を利用する一般男性消費者のペルソナを「性欲の充足を利己的に追求するものであり、いい女性(または男性、器具、右手等々)とH(射精)するために、1円でも安く費用対効果を計算して合理的に判断し行動する(注)」と定義している。 もちろん男性は、本指名すると基本料金が上がってもオキニ嬢として裏を返し続ける行動、つまり「勘定」よりも「感情」が優先される非合理的な行動もとるが、本稿での消費者については、経済性に着目して行動をする一般男性に絞っている。
(注):「風俗依存症候群」の行動研究による「セーラー係数」に、アダム・スミスの「道徳情操論(The Theory of Moral Sentiments)」を当てはめている。

4.ケルパーの法則

 ここで想定する消費者は、自分の「性欲」に忠実である。なぜ性欲に忠実なのか、それは気持ちよくて「快楽」が得られるからである。この消費者がサービスを購入して得られる快楽を「効用」という。
 効用を(u)、サービスを受け射精する回数を(x)として数式にすると、
 u=f(x)
となる。これは、飽きることがない仮定の上で射精回数が増えるほど効用も増える事を表している。この「性サービスを受け射精する回数が1単位増加したときに得られる効用の増加分」を「限界効用」という。ここで言う「限界」とは経済学の用語であり、2つ以上の物の量が関係しあって変化する割合を示しているので、「追加的」と言い換えると理解しやすい。

 射精の限界効用が始めて言及されたのは、19世紀末ドイツにて出版されたSchnuffi Korper著の「人間の交わりの行動法則ならびに人間の取引の諸基準の発展」(原題Verhaltensgesetz der menschlichen Gemeinschaft und der daraus fliesenden Regeln fur menschliches Handeln)である。その中で、明らかにされたのが一般社会での経験から得られた以下の法則である。

「精子の消費量が増えるにつれて、ひとりの娼婦から得られる効用は次第に小さくなる」

 つまり、同一の性サービスにおいては、射精回数(精子の消費量)が増えるにつれて、精子の追加消費分から得られる効用(快楽)は次第に小さくなる、と明らかにし「限界効用逓減の法則」と名付けた。後に著作者の名前からケルパーの法則と通称される。

5.予算の制約と効用最大化

 消費者の行動目標は、使えるお金「予算」に一定の制約を受ける中で、最大の効用を達成することである。欲望は無限であるが、実際には予算の壁がある。よって消費者は、「予算の制約のもとで、なるべく得られる快楽(効用)を大きくする」行動をとる。上記ペルソナの定義も参照。

 ケルパーの法則が成立するもとで、ある消費者が、限られた予算(おこづかい)で複数のサービスを消費する場合、その快楽を最大にするそれぞれの精子の消費量は、各サービスの限界効用をそのサービスの価格で割った値が、それぞれのサービスについて等しくなる数量の組み合わせになる。
 例えば、共に価格が1万円の箱ヘル2軒とソープ2軒の組み合わせで最大の快楽を得ようとするとき、箱ヘルを我慢した時に減る効用より、その分ソープを2軒遊んて増える効用の方が大きかったら、快楽をを最大にしたい場合、箱ヘルを我慢して、ソープで4回遊ぶであろう。
 逆にソープを我慢して箱ヘルの方で快楽が高い人が居るかも知れない。つまり箱ヘル(またはソープ)で遊ぶのを我慢したときに減少する効用とその分ソープ(または箱ヘル)で遊んで増加する効用がひとしくなる時に最大の快楽が得られるということである。

 一般化するなら、サービスの数量を軸として、箱ヘル回数を(x)、ソープ回数を(y)とする。また予算(おこつかい)は、m円、箱ヘルの価格をpx円、ソープの総額をpy円とする。
消費者は予算の全てを2つのサービスで消費すると、
 m=(px)x+(py)y
となる。これを一次関数で表すと、
 y=−(px/py)x+m/py
となる。この右下がりの直線とx軸y軸に囲まれた内側領域が予算内で遊べる組み合わせとなり、範囲を示す直線を予算制約線という。
 また、px/py =(箱ヘルの価格)/(ソープの価格)のような価格の比率のことを(箱ヘルのソープに対する)相対価格と言う。このような相対価格は、予算を使い切った状態での箱ヘルの消費とソープの消費のトレードオフを表している。トレードオフとは、何かを得ようとすると何かを犠牲にしなければならないことを意味しており、この場合は箱ヘルの消費を増やそうとするとソープの消費をあきらめなければならないことを示している。

 効用(u)は、箱ヘル回数を(x)、ソープ回数を(y)とすると、ケルパーの法則から、
 u=f(x,y)
と3次元の曲面で表される。これを効用軸方向からxy平面に投影すると等高線を描く曲線となる。この曲線を効用曲線という。効用曲線と予算制約線が接する点で、消費者の効用が最大になる、最適消費量が決定される。これは、ある一定の効用水準を得るための支払金額を最小にする消費の組み合わせとも考えられる。

6.まとめ

 一般的には、所得が増えればおこずかい(予算)が増え、消費量も増えると考えられる。また、サービス提供価格が変化しても消費量は変化する。上記の例で言えば、箱へルやソープの価格が安くなる、または割引券・ポイント等を使う場合は、予算(m)が変わらなくても、予算制約線のx軸やy軸との交点(m/px、m/py)がそれぞれ大きくなり、予算制約線の位置が右側に移動し領域が拡大する、つまり、実質的には予算が増えたの同じ事であり、消費量の増加を促すことになる。

 現在の社会情勢では、労働者である一般男性の所得が大幅に増えるの期待できないであろう。ましてや性風俗で遊ぶ予算を増やすのは難しいと考える。性風俗がナッシュ均衡でありその状況でサービス提供者が競合に打ち勝ち生き残り損益を伸ばすために、消費者の予算が見た目増える状況を作り出すマーケティング4P分析は必要であろう。
 しかし、人間は経済学で考えるほど合理的には行動しない、つまり勘定よりも感情が優先される非合理的な行動もとる事を忘れたサービス提供者が衰退していくのは、必然かも知れない。

 以上、本投稿の内容は、独断と偏見と創作であることをここにお断りしておく。
 May Kama be with you.

 運営諮問委員長 黒川洋介 (R01.12.27)
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