〜©日本ピンサロ研究会〜

わが国における風俗産業の位置付けとその役割


by KEN氏

1 プロローグ
 先日ある風俗嬢と他愛のない会話をしていたときのことである。彼女が実に意外な一言を発した。

 「私たちは犯罪の防止に役に立っているんだよ,私たちがいなきゃ欲求不満で犯罪が増えるに決まってるもん!これでも社会の役にたってるんだからさっ!!」

 私の研究はこの一言で始まることになった。

2 風俗産業の歴史的背景
 はるか昔,日本ではいわゆる売春は合法的行為として位置付けられていた(地域を限っていたが)。それが売春防止法の施行とともに「違法」行為となったわけであるが,実は終戦直後に政府が売春婦を募集したという歴史的事実があることを忘れてはなるまい。これを政府が政府の名において実施したとは思えないが,何らかの形で政府の意思が介在していたの事実のようだ。
 それは国連軍(実質的な合衆国軍)の進駐に合わせて進められたと言われている。三年半にわたる太平洋戦争により疲弊し尽くした日本は米内光政の言葉を借りれば「ジリ貧どころではなくドカ貧」状態だったわけである。疲れ果てた国民に鬼畜米英と教育されたアメリカ人がくることは底知れぬ恐怖であったろう。そして最も懸念されたのが,合衆国軍兵士による,略奪・強姦であったろうことは想像に難しくない。戦闘中の軍隊では当時略奪・強姦はかなり発生していたといわれる。それは主義・主張に関係なくどこの軍隊でも発生する。当然政府関係者もその辺は熟知しているわけで,何らかの対応策を講ずるのは必要なことであったろう。そして売春婦の募集となったわけであるが,そのとき言われたのが,冒頭に紹介した風俗嬢の言葉と同様のことだった。

 「大和撫子の貞操を守るため,その防波堤とするために・・・・」

3 性犯罪の現状
 わが国は諸外国と比較し治安は良いと言われている。が,犯罪の低年齢化悪質化は目を覆うばかりである。性犯罪を統計的に見てみると強姦事件はH9・10年で急激な上昇をしている。H8年が認知件数約1,500件でH10年には1,857件である。検挙数はH10年で1,369件,率にして73%とかなり高い確率である。
 さらに,H10年の一審で終局した強姦事件の有罪率は実に99.9%,無罪の言渡しはわずかに1件のみである。この数値は他の犯罪も同様の傾向を示しており,特段強姦事件に特徴的な統計とは言えないが,もうひとつは強姦事件については特に顕著なものとして特筆しなければならい。すなわち有罪判決における,執行猶予率の低さである。H10年を例にすると,33%の執行猶予率である。すなわち67%は実刑の言渡しがなされたわけでこれはかなりの高率と言える。殺人・強盗は別としても,例えば恐喝が61.9%,傷害が55.8%の執行猶予率と言った具合である。
 法律実務的に言うと,強姦事件の場合,結審までに損害賠償(言うところの示談)が終わっているのが執行猶予の最低条件である。仮に示談が成立していなければ実刑と考えて間違いない。
 被害に遭った場合,基本的に示談は判決までするべきではない。示談すればかなりの高い確率(相手が低年齢で初犯であればなお更)で執行猶予となる。執行猶予は期間が経過すれば判決は言い渡されなかったものと(法律上)みなされ,数年すれば何の権利の制限もなく生活できるのである。
 しかし,判決前に示談しなければ相手は確実に実刑となり,出所後色々な不利益を蒙る事になる。どのみち有罪になれば民事訴訟(損害賠償請求訴訟)を起こせば確実に勝訴の判決がもらえる。女性の人格を踏みにじるような人間には最大限の苦痛を与えなければならない。

4 社会における風俗産業の位置付け
 わが国は今,戦後最大のそして未曾有の経済的停滞期を迎えている。最近ではデフレーションも懸念される危機的状況である。あらゆる産業で価格低下を余儀なくされ,それが収益率をマイナスにするような価格設定にまで低下して,もはや経済活動とは言えない状況が現出しつつある。
 確かに今までより安く物品を購入できるのは,短期的には消費者の利益に繋がっているように見えるが,長期的には収益をマイナスにするほどの価格競争により,体力のある大企業等のみに集約・寡占され,価格競争がなくなる,すなわち消費者の選択肢がなくなると言う最悪の結果を招きかねない危険をはらんでいると言える。
 翻って我が風俗産業はどうであろうか?比較的不況に強いと言われる同産業であるがさすがに現在の不況はひとり蚊帳の外と言う訳にはいかない。最近の料金の低下には目を見張るものがあるが,上のような危惧がないわけではない。
 しかし,風俗産業がわが国の産業のなかでも最も収益率が高いのは明らかであって,その経済に占める地位は不況であるがゆえにいやがうえにも大きなウェイトを占めつつあると言い得る。

 風俗産業がいかに資金流動性が高いかは西日本本部長M氏の論文「日本経済復興計画 〜苦しいときの風俗嬢頼み〜」で明らかにされているので詳細は省くが,経済の優等生であるのは論を待たないところである。
 さらに,風適法の施行により性風俗特殊営業として政府から正式に産業として認められた意義は大きいと言える。これにより風俗産業がアンダーグランド化せず,表社会にその資金が流通する大きな可能性が出てきたと言えるわけで,これによる経済への刺激は相応の効果をもたらすものと期待される。
 また,日払い,週払いなどの比較的短期間での給与の支払いが為されているのもこの業界の特徴で,これは彼女らの奔放な金銭消費から見ても,個人消費を押し上げるという意味で経済に与える影響は大きいものがある。

 そして風俗産業が果たしている犯罪防止上の社会的な役割も経済に与える影響よりはるかに重要な事として認識しなければならない。性欲という人間の本能は時に人を野獣に変える。その結果が強姦であり強制わいせつなわけであるが,幸いなことに我が国風俗産業はほぼあらゆるニーズに応える体制で十分にその社会的責任を果たしてきた。統計学的には何も資料がないが,風俗のおかげで犯罪者とならずに済んだ者は相当な数に上ると推測するのは難しくない。
 これにより救われるのは犯罪者のみではない。より恩恵を受けているのは一般の子女である。風俗嬢の存在があるからこそ正に「大和撫子の貞操が守られ」ているのであり,風俗嬢は正に「防波堤となり」なわけである。
 性犯罪被害に遭遇した場合の,特に精神に与える影響は甚大であり,またその周囲の親兄弟,恋人等に与える影響も見逃せない。これらの被害は決して金銭に換算できるものではない。それがいかに精神的な重荷かは実際に経験しなければ分からない。また,そのケアのためにどれだけの労力が掛かるかは想像に難しくない。
 本人のみならずこれは社会的にも大きな損失と言わねばならない。警察が性犯罪被害専門のセクションを立ち上げたという事実だけでも何千万単位の予算を要しているのである。
 仮にこの損失を金銭に換算したとしよう,まず被害に遭った女性の精神的な損失であるが,民法上損害を与えたら原状に復するのが原則である。強姦事件の場合,(外見上損害が顕在化しないという意味で)それは無形の損害である(ただし,例外もある)ので原状に回復するのは不可能であり,金銭に換算した額と言うことになえるが,この金額は驚くほど低い。私の知る限り300万円を超える例はあまり聞かない。百数十万と言うのが多いようだ。(これは明らかに低すぎる額であるが,本論文の主題とは異なるので考察は差し控える)
 さらに,被害者のケアのために一定期間精神科への通院も必要と思われる。当然の事ながら無料ではない。
 場合によっては被害者の精神的な苦痛を和らげるため転居,転校,転職の可能性も大いにありうることである。
 これらを勘案すれば下手をすると1件あたり1000万円以上の損失が発生する場合もあり得るということである。
 この他に有形無形の精神的重荷を背負わなければならない。私自身は被害者本人以上にその周囲,特に親にとってはかなりのの苦痛があろうと思う。それにより生ずる気力の減退,仕事も当然能率が落ちるわけで,会社等に与える無形の影響は計り知れないものがあり,莫大な損失,社会的損失が発生していると言えるわけで,トータルした損失はもはや想像を絶する額になるのではないであろうか。

 こうした損失をわずか数万円で未然に防止していると言う意味で,風俗産業(風俗嬢)が社会に占める位置は決して日陰ではなく,日なたであるべきで,また,その奔放な購買力が日本経済に与える好影響は侮れないものであり,風俗産業の重要性はもっと評価されてしかるべきであり,再認識しなければならない。

4 終わりに
 世の中とかく風俗産業,風俗嬢を一段下の存在と見ている人間がいるのは残念ながら事実である。しかし,単になんとなく終業時間までいて,遊びのほうが大切...と言うOLなどと比べいかにその社会的貢献度が高いかは納得していただけたと思う。
 もしかしたらあなたが犯罪者にならずに済んだのは彼女たちのおかげかも知れない,あなたの彼女が性犯罪の被害者にならなかったのは,あなたのオキニのおかげかも知れないのだ....

 日本ピンサロ研究会 会長 KEN


参考文献 平成12年度版 犯罪白書(法務総合研究所)