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「風俗関連諸法(売春防止法)質疑応答」

 売春防止法に関し、読者の方からご質問を頂きましたので解答いたします。売春防止法については「風俗関連諸法(売春防止法)」をご参照ください。
(解答:KEN氏)


【質問】

 愛人契約と売春契約は法的解釈では違うのですか? 愛人契約は1:1です。この場合にも売春防止法のいう売春をさせる契約と法的には解釈されるのでしょうか?

【解答】

愛人契約ですが少し漠然としていますね。色々な類型が考えられますが,次のとおりとしてみます。

「A和さんがB江さんにマンションを貸与し,毎月20万円のお手当を支給し,かつ週に数回の性交渉を持つ」

こんな感じで定義付けします。

 さて売春の定義ですが売防法2条により次のとおりとされています。「対償を受け,又は受ける約束で,不特定の相手方と性交すること」です。ここで注意するのは不特定の相手方であり,よく言う「不特定多数」ではないと言うことです。たとえ1人を相手にしても不特定であればそれは売春です。逆に特定の「愛人契約」であれば極端な話,たとえ10人相手でもそれは売春ではありません。誰がどう言おうが法律ではそうなります。「法律なければ刑罰無し」です。

 刑法典では常識だとかは一切考慮の対象外です,ただただ法令のみなのです。愛人契約では,売春の定義の「不特定の相手方」という要件が欠落していますね,ですからなんら規制されるものではありません。刑法典上は・・・しかし民法上は大いに問題がありますが今回は刑法上の責任の問題ですからこれは置いておきましょう。

 ただ,愛人契約も売防法では規制されなくても,都道府県条例で18才未満の者に対する場合は規制されます。例えば東京都の青少年育成条例18条の2によれば18才未満を相手とする売春はもちろん,愛人契約も禁止されます。これは客の側が規制され,逆に売春する者自体はなんら罰則規定はありません。

 さらに東京都と長野県以外では,結婚を前提とする以外の18才未満との性交渉は対価の授受を伴わなくとも罰せられます。つまり子供とやってしまえばすべて罰せられるのです。実際これで逮捕される例は少なくありません。よく言う援助交際などと言って少女がはしゃいでいますが,これは売春です。

 売春契約については,客は何らの罰則もありません。供述調書も当然参考人(つまり犯罪を立証するための補強証拠です)として任意的に行われるものであり,拒否しても何ら問題はありません。(ただし裁判所での証人は拒否できません)

 一つ注意しなければならないのは,売防法で規制対象の売春契約は「売春をさせる契約」ということです。これは売防法10条によります。つまり「売春をする契約」は刑法典における規制対象ではありません。すこし整理してみましょう。

「C吉さんが自らの管理のもとD子さんに売春をさせる契約=売春をさせる契約」

「D子さんが客のE太君と売春をする契約=売春をする契約」

 違いがお分かりかと思います。売防法は本質的に管理売春の防止を最大の目的としています。遥か昔の貧しかった人々が「身売り」と言う形で搾取されていたのを防止するためです。つまり「売春をする契約」自体はなんら刑法上の責任は問われません。売防法で規制される売春婦の実行行為は主として「勧誘」です。売防法5条各項によります。

 売防法には「売春をする目的で勧誘をしてはならない」と記されているだけで,売春をする契約をしてはならないとはなっていません。実は売春自体は規制されないのです。規制されるのはあくまで「売春目的の勧誘」であり,勧誘自体を立証できなければ売春行為自体は処罰されないのです。一応3条で売春の禁止をしてはいますがこれの罰則規定はありません。