by 文才無男氏
彼女を初めて指名した時、靡く黒髪が印象的でした。今回でもう四回目の指名になりますが、いつのまにか彼女自慢のロングヘアは深みのある茶色になり、それによりさらに雰囲気が艶めかしくなりました。本来ならば年月を経る毎に衰える筈の身体も、出会った頃と変わらないままに美しく、透き通るような色白で、抜群のスタイルを維持していて…会う度に、どこまで僕の欲望を?き乱すんだと憤りにも似たものを感じることもしばしばありました。
この店の施術着は、いつも白の開襟シャツと黒のタイトスカート。近頃は襟元のボタンを一つ多くはだけさせています。ホテルで待っているとチャイムが鳴り、いつもように彼女を迎え入れます。
「こんばんは。いつもありがとうございます。」
「僕のこと、覚えてくれているんですか…?そんなに頻繁に会えていないのに。」
「勿論。覚えてますよ、〇〇さん。」
そう言うと彼女は柔らかに微笑み、僕の乱れた心中など気にもせず…いえ、気付いていないのかもしれませんが、手際良く施術の準備を始めます。僕はというと、彼女が来る前に丹念に自身の身体を清めていますから、ただその姿を、若き日の教員に恋焦がれる学生のように眺めるたけです。
準備が整ったところで、僕は促されるままベッドに寄りかかりました。そうして待つ間、彼女はシャワー室で着替えます。そして数分もしない内に彼女はシンプルではあれど魅力的な施術着姿で現れ、声を掛けてくれます。
「○○さん、準備ができましたのでうつ伏せになってください。」
言われた通りうつ伏せになると、彼女の華奢な指先が適度な力加減で圧を加えてくれます。
「今日はどこか気持ち良い部分はありますか?」
「そうですね…また首をお願いしてもいいですか?」
こうお願いしたのには理由がありました。というのも、彼女に首のマッサージをしてもらうと、欲がダイレクトに刺激されるんです。同じ空間に居るというだけで胸がはち切れそうな僕は、別の欲求、すなわちこの恋心をかき消す程の強い欲で毎回感情を押し殺さないと、どうにかなりそうで…なので今回もそういう意味でお願いしました。
そんな僕の思惑を知らず、彼女は胸のあたりに股間を密着させるようにして座り、首を優しくマッサージし始めました。彼女のロングヘアが僕の肩先に触れたり、甘い妖艶な香りが漂ってきて…どうにかなりそうなのを必死に抑え込む僕に、色々と彼女が話しかけてくれているのは頭では分かっていても、心ここにあらず。すると、彼女が僕の頭を優しく撫で、
「○○さん、私の話、ちゃんと聞いてくれてます?」
「えっあっすみません、貴方に夢中で聞いてませんでした…」
「…ふふ、仕方のない人ですね?」
慌ててしまい嘘もロクに付けないまま答えた僕に対して、またあのやわらかな笑顔を向けて言葉を返す彼女。それを見てふと、初めて出会った頃はお互いに緊張していたことを思い出し、何回も指名したからこそ彼女とこんなにも仲良くなれたのだと改めて実感しました。
そうこうしている内に時間は過ぎ、
「○○さん、仰向けになってくださいね」
いよいよ僕の心臓の限界を試す時間。いえ、心臓だけじゃない。理性を試される時間…性感マッサージの始まりです。これまでに通算三回も逝かせてもらいましたが、やはり始まる最初の瞬間は鼓動がうるさくなってしまいます。その時の体調の良し悪しで、肉棒が勃起したり委縮したりもしますし…そういう意味での緊張は、出会った頃と変わらずあるかもしれません。
しかし、そんな僕の心配などお構いなしに、彼女はすでに知り尽くした敏感な部分を刺激します。触れるか触れないかという絶妙な距離感で、鼠蹊部をフェザータッチ。それだけで腰が浮いてしまう僕。それを見越した彼女は、わざとフェザータッチを止め、何もしなくなります。そして何もない時間に僕が焦れて見つめると、優しく微笑み、また始めるのです。
この焦れったいマッサージが欲を大きく刺激。玉袋を揉みしだきながら、溢れ出てくる僕のヌル付いた我慢汁を指の腹で撫でてくれます。この時間、この瞬間が永遠に続けばいい、ときっと彼女を指名した方なら誰もが一度は願ったことだと思いますが、僕もちろん例外ではなく、始終願い続けていました。
しかし、終わりは刻一刻と近付いてきます。フィニッシュは、ハンド手〇キによるストロークです
「い、逝きそうです!」
「いいですよ、逝って。」
「でもっ…でも」
まだ逝きたくない、果てたくない。そう強い想いから首を振る僕に、彼女は普段以上にやわらかく、何もかもを包み込むような笑顔でこう囁きました。
「大丈夫、私が傍にいますから。」
…この時の僕が得た耐えがたい程の衝撃と快感は言葉にできません。ですが心から快楽に溺れた瞬間であり、心も体も満たされた瞬間でした。
若かくて可愛らしい彼女の手技には、何ともいいようのない異次元の快感があります。でも、今回彼女の施術で得たものは快感だけではありませんでした。次回もきっと僕は彼女に伝えたいことを伝えられないままでいると思います。でも、まだこのままでいい、このままがいいとも思ってしまうのです。
(R01.07.09)