〜グリーシャン・トリック作戦戦記〜

　「雨、大丈夫でした？」
　いつも通りの物腰柔らかな落ち着いた態度、癒し系であるオキニの微笑にほっと一息する。
「風はすごいけど雨は少しおさまってきているよ今は。でもさ、ものすごい降り方だったよね、さすが近年最強と言われるだけの台風ではあるね」
「前のお客さんなんですけど、ズボンがびしょびしょでしたよ」
「わざわざこんな日に来る客も客かってことだね」
「その方、近くまで来たから雨宿りがてら寄ってみたよ、なんて言ってました(笑)」
「あははは、しゃれたこと言う人だね〜、でも俺はTちゃんに会うために草加までわざわざ来たんだから。その人とは全く逆だよ」
「え〜、そうなんですか？…でもそういうことでしたら、私としてはとても光栄です」
こう言ってクスッと笑うオキニにつられ、こちらも思わず頬が緩んでしまった。
「大型で強い勢力の台風10号は現在富山市の南を1時間に30kmの速さで北北東に進んでいます。中心の気圧は960ミリヘクトパスカルで中心付近では風速40mを超える暴風域となっており、中心から30km圏内では…」
富山市からはるかに離れている東京都足立区でも台風による風雨は激しいのだが、午後になって若干雨の勢いが弱くなり始めた。休日には混んでいる草加「スーパーラブ」もさすがにこんな日はすいているのではないだろうか。それよりオキニが出勤しているかどうかの方が問題だな。家にある一番大きくて頑丈そうな傘を手にして、強風に背を押され、また引かれながらオキニの元へ足取りも軽く馳せ参じるファントムであった。
　久しぶりにオキニに会うということで、草加へ向かう伊勢崎線準急の中、ファントムの気持ちは高まっていく。う〜ん、熱い！ファントムの体内は台風10号を打ち負かしてしまうような高気圧状態となっているかも。
　草加の駅へ降り立ってみると風の勢いは相変わらず激しかったのだが、ありがたいことに雨が一時的に弱くなってきた。この隙に風俗の館4階まで駆け上り、黒い扉に手をかけようとしたそのとき、扉がスッと開いた。客が退店するところだったのだ。満足そうな表情を浮かべて店内から出てきた客をにこやかに見送る女の子は、なんとオキニだった。そのときファントムとオキニの視線がバチッと合って、一瞬オキニの眼にちょっと驚きの表情が現れ、歯を見せて笑みしていた口が閉じ、ニッという笑みに変わっていったのだ。送られる客、迎える客、どちらに向けたそんな笑みなのか、判別がつかない微妙な表情だった。
　店は思った通りすいていたので、五分後には話しを始めた二人だった。
「でも、ああいう状況でご対面は初めてだよね」
「そうですよね。絶妙のタイミングでしたかしら」
「Tちゃんが客をにこやかに送り出す姿を見てさ、俺、胸がキュンとしちゃったよ」
「え？」
「だ、か、ら、ヤキモチやいちゃったてこと」
「あ、あはは、でもそれは…」
「はは、ま、珍しいことには違いないよね」
「ですね、こういうことは滅多にないですよ。ついてなかったかなって…」そう言って再びクスッと笑うオキニであった。

(回転系ピンサロ)
15分づつのW回転
12:00〜18:00　4000円
18:00〜　5000円
21:00〜　6000円(かな？)
指名料　1000円、ただし一人しか指名は出来ない

　オキニの真心のこもった申し分のないサービスに続き、若干事務的ではあるが二人目の子の手抜き無しのお仕事により本日は瞬間最大風速並みの見事な2連射を達成できた。退店前の数分、指名の子が再び席に戻ってきてくれるので、名残を惜しみつつオキニにと甘いキスをする。
　Tちゃん、君はすっごくいいよ。

　第1戦略調査隊長（東京北支部長）ファントム　(H15.08.22)