〜©日本ピンサロ研究会〜

研究ノート「愛知県のピンクサロンにおけるサービス料金について」
〜イベントコース料金に関する一つのノート〜

by ょぃこ氏


 あらまし
 近年の性風俗店の多様化に伴い、さまざまな形式のサービスおよび料金制度が見られるようになった。その一方で、地域性および伝統的な制度も多く存在しており、サービス料金に関する地域性も存在する。その結果、料金体系の地域的差異は多くのトラブルを引き起こす原因にもなりうる。
 そのトラブルは、料金制度の不透明性から惹起されることもあり、利用者にとっては多少ならずストレスに感じることもありうる。本稿では、愛知県のピンクサロンにおける料金制度に関して考察する。特にイベントコースにおける嬢の給与に注目し考察することで、そのコースの欠点を明確に示す。

キーワード
ピンクサロン、イベントコース、サービス、名古屋

 1.はじめに
 各地域において、性風俗はそれぞれの特異性および多様性を持ち、サービスや料金制度に関して特にその差異は顕著であるといえる。それらの差異は、性風俗店を紹介・宣伝している情報誌に掲示してある内容に関して、地域ごとに比較することで容易に知ることが可能である。
 たとえば、個室つきサウナ(通称ソープランド)においては、制度上、地域ごとに総額表示または入浴料金のみの表示に分かれており、前者は入浴料金およびサービス料金を合わせた額で、場合によっては指名料金が別途必要である。後者は、広告に入浴料金のみが表示されており、広告を見る限りサービス料金を知ることはできない。熊本や岐阜などが後者の一例である。
 一般的に、入浴料金のみ表示してある場合、サービス料金は対象の店舗に電話で問い合わせるかまたは直接来訪して聴取することで知ることができる。
 以上ソープランドを例にとって料金表示の差異を示したが、性風俗店で特異な料金体系を表示している地域に愛知県が挙げられると考えるのは著者だけであろうか。
 特に愛知県ではピンクサロンいわゆるキャンパブといわれる性風俗店(法制上は飲食店に分類される)では、複雑な料金体系から構成されており、利用者にとっては不透明性を感じる場合があることも考えられる。
 本稿では、愛知県のピンクサロンにおける料金制度を概説し、その問題点に関して議論する。とくに、イベントコースと呼ばれる、通常コースより安い価格で受けられるサービスに関して、嬢の給与に注目し、イベントコースが引き起こすさまざまな影響に関して考察する。

 2.入場料金
 愛知県で見られる料金体系は、入場料とサービス料が個別に表示されており、なかんずくピンクサロン(愛知県では、キャンパブという)では、店内に入る際に入場料金を請求される。もちろん、店内に入場した後にサービス料と合わせた額を請求される場合もある。
 本入場料金の前徴収は、サービス体系および風俗嬢の写真などを示された後で、利用者が利用をキャンセルしないための保険であると考えられる。店側は、入場料を前徴収しておくことで、多少サービス内容および風俗嬢が利用者の嗜好にあわない場合でも、利用者が利用をキャンセルするインセンティブを弱める効果のために本入場料金制度を導入していると考えられる。実際には、ほとんどの場合利用者が利用をキャンセルした際には入場料を返還しているようであるが、旅行などではじめて名古屋を訪れた利用者にとっては本入場料は返還されないと感じるのではなかろうか。
 ピンクサロンの料金は、そのサービス料金に対して入場料金の占める割合が高い。そのため、入場料を返還されないと考える利用者にとっては、自らの嗜好に合わない風俗嬢しか在籍していない場合でも、多少妥協せざる得ない。事実、入場料2000円に対してサービス料金が1000円未満の店舗も存在しており、自らの嗜好に合わない場合でも2000円が返還されないよりは1000円を出してサービスを受けたほうがいいと感じる利用者も存在すると考えられる。

 本料金制度は、名古屋でも特に名古屋駅の周囲に出店しているピンクサロンに多く見られる。旅行や出張のために名古屋を訪れている利用者が大半を占めているため本料金制度はこの地区に顕著にあらわれていると考えられる。本料金制度は、実際は不透明なものであり交渉によっては入場料金が不要になることもある。ほとんどの店舗が領収証書を発行しないため、入場料金がどのように運用されているかは、利用者の知るところではない。

 3.サービス料金
 愛知県のピンクサロンでは、サービス料金に関して複雑な料金制度を適用している店舗が多く見られる。
 たとえば、イベントとして通常料金の半額程度の料金によりサービスを提供している場合や、通常のコース料金にも複数存在している場合もある。
 本料金制度は、価格差別によるサービス提供であるといえる。
 通常コースにおける複数の料金体系は、サービスの内容およびサービス時間の2つに大別される。
 サービスの内容は、風俗嬢と話をするだけ、風俗嬢が手を使ったサービス、口を使ったサービスなどに分類される。
 サービス時間は、利用者がサービスを受けることができる時間のことである。
 イベントコースは店舗によっては通常コースと同様のサービスで単に価格だけが安くなるというものである場合と、通常コースと本質的にサービスが異なる場合とがある。
 前者は、利用する時間帯でのタイムサービスとして適用されることもある。一般に、割引チケットなどを提示するまたは口頭でイベントコース利用を伝えることでイベント料金が適用される。チケットを提示しないまたは口頭で伝えない場合、メインコースが適用され、場合によってはヘルスよりも高額に設定された料金が請求されることもある。

 イベントコースが通常コースと本質的に異なることがあると上述したが、日本ピンサロ研究会の複数の報告により、明らかである。以下に、実在する風俗店のイベントコースをいくつか示す。

バットマン(名駅)
イベントコースA:総額5000円
内容:写真指名不可、嬢の上半身のみ脱衣、下半身は触れることができない、口によるサービス

バットマン(名駅)
イベントコースB:総額8000円(2004年8月までは7000円)
内容:写真指名可、受身つき、全脱衣、口によるサービス、69または時間内無制限サービス

ラブワゴン(名駅大曽根、南)
イベントコース:総額6000円
内容:写真指名不可、受身つき、全脱衣、口によるサービス、生理中の嬢を割り当てる場合有り

コぎゃるんです(名駅春日井
イベントコース:総額3980〜4980円(18時以降1000円UP)
内容:写真指名不可、嬢の脱衣なし、服の上から上半身のみ触れることができる、下半身は触れることができない、口によるサービス

ときメモ学園(名駅)
イベントコース:総額8000円(50分)
内容:実物選択、受身つき、全脱衣、口によるサービス(通常コースと同様:通常コースは+5000円)

以上より、イベントコース(特にイベントコース料金が低額な店舗)は制限が多く設定されている。基本的に名駅の周りでは、5000円前後のイベントコースでは、下半身に触れることはできない。嬢に対する給与も、イベントコースと指名した場合では大きく異なることが著者のインタビューにより報告されている。なお、バットマンのイベントコースBおよびときメモ学園では、イベントコースにもかかわらず総額が他店より高いためサービス内容の制限は緩和されていると考えられる。
 なお、著者のインタビューによれば某店舗では、通常コースでもイベントコースでも嬢の給与は同一であるとされる。つまり、通常コースでの5000円分は店側の利益に加算されている。以上の点を考慮すれば、通常コースでの店と嬢の取り分は50%ずつまたは嬢のほうが少ない割合であることがわかる。

 4.考察
 イベントコースと通常コースが同じ時間量で設定され、それぞれの給与が異なる場合、嬢にとってはその時間に対する給与が変化することを意味している。これは、日本ピンサロ研究会などの学会で指摘されているように、サービス時間の一方的な時間短縮という問題を惹起しうる。
 もし、嬢にとってイベントコースが自らの効用を減少させる場合、時間短縮の手段をとることで、給与の減少を回避することが可能である。短縮した時間を他の利用者で補えば給与の減少は回避することが可能となりうる。
 しかし、この場合利用者にとっては再度この店舗を利用するインセンティブがなくなり、そのことで店は潜在的な利用者の来店のチャンスを逃す。利用者にとっても、時間短縮されたことで、効用が減少すると考えられる。以上により、嬢の給与がイベントコースにより変化する場合、そのコースの存在は好ましいとはいえない。イベントコースが、効用の和(社会的総余剰)を減少させてしまうため、本コースを設定することは経営戦略的に失敗しているといえる。
 なお、イベントという語は、一時的な事象の発生を意味しているものであり、年間通して実施されている風俗店の「イベント」コースは語法的に誤りである。

 5.おわりに
 本稿では、ピンクサロンにおけるイベントコースの制度に関して、嬢の給与の視点で考察した。多くのピンクサロンでは単にサービス時間により料金が設定されているのに対して、名古屋地区ではサービス内容に基づいた料金設定が見られる。
 先述に示したとおり、イベントコースを含めれば複雑な料金体系になり、営業の不透明さが見受けられる。場合によっては、本料金制度が利用者と店とのトラブルとさえなる場合もある。
 考察から、イベントコースで嬢の給与が変化する場合、その店舗は経営戦略的に失敗しているといえる。嬢が自らの効用の減少を防ぐために、嬢がサービス時間の時間短縮を行うことで、店側にとっては再来の可能性がある利用者を失うことにつながり、利用者と店舗の効用は減少する。イベントコースを開設しようとする店にとっては嬢への給与体系の慎重な整備により、利益を増加させることができると考えられる。
 最後に、本稿が、名古屋地区でこれまでピンクサロンを利用した事がない読者に対して、名古屋地区(特に名古屋駅の周り)の料金の不透明性および地域性の理解の一助のなれば幸いである。

 6.謝辞
 本稿に掲載した店舗を含めて複数の店舗で勤務している嬢に対して、給与および経営状況さらに店舗の性質をインタビューした。著者のインタビューに協力していただいた方々に深く感謝する。

  (H16.09.24)

トップページへ

〜©日本ピンサロ研究会〜