by 黒川洋介氏
こんにちは。
福岡に来て1年が経ちました。たった1年での感想ですが、中洲風俗の栄枯盛衰は激しさを増すばかりの様です。
1.はじめに
永きに渡り堅実に経営されている風俗店もあれば、短期に店じまいをする風俗店もあります。拡大路線で福岡に進出してくる風俗資本もありますが、いつのまにか撤退している場合があります。
福岡県警本部からのご指導でお店が代わってしまう場合が多い様な気もしますが、やはり営業利益が稼げずに閉店や縮小を余儀なくされているのが実態かと思います。
堅実に経営しているお店、儲けが確保できているお店と、そうでないお店の差は何処にあるのか「経済モデル(備考)」からマネジメントの観点で考察してみたいと思います。
本来であれば、フィールドワークを積み上げて、より適切な「欲動モデル」を構築し考察すべきですが、机上の空論からアプローチするのも面白いかと考えて投稿する事にしました。今回の研究ノートでは、「経済モデル」が対象となっているため、欲動経済学から考察されるモデルとの乖離が大きい可能性もある事を初めにお断りしておきます。
2.儲けの差
性風俗ですから「お客が風俗嬢に満足しているか」が利益の差になっているのは間違いありません。特に、デリヘルでは顕著であり、資本規模とは関係ないと考えています。
つまり差が発生するのは、風俗嬢が働いている現場での実態が問題となっているからだと思います。経営者や店長の考えていることが、現場で風俗嬢により具体的に実行されているか、お店のコンセプトに合わせてサービスが実行されているか、それがお客の満足につながっているのかが、風俗店の利益を決めていると言っても過言ではありません。
つまりこれは、マネジメントレベルが高いか低いかとされる、一般企業と同じ問題であると言うことができます。経営者や店長の言っていることがどれだけ現場の風俗嬢で実行されているか、お店のコンセプトがどれだけ風俗嬢によって理解されているかの「度合い」が、マネジメントレベルと言う事です。このマネジメントレベルの高さが風俗店の利益に大きく影響していると言えます。
風俗店では風俗嬢の行動がすべてです。経営者や店長が何を言おうと、現場で風俗嬢により実行されなければ業績を上げることはできません。しかし、とある研究機関による「店長の指示に対する風俗嬢のサービス実行度合い」を調査した結果をみると、大体いつも40%以下と低い数値が出ています。
そこで、新しい嬢を採用する場合の見極めが、風俗店にとって生命線であると言う事になります。採用には多大なコストが掛かります。容姿が良いだけの嬢を採用するのは避け、理解力のある嬢を採用する力を付けなければならないと考えます。風俗店での現場での実行レベルが大切であることは上記しましたが、採用力を上げることで、お店やデリバリ先での実行度合いを引き上げていくことも可能になります。
現実には採用時のコスト負担が大きいので実施するには高度な経営判断が必要ですが、指名が取れる嬢にはフリー客をもっと付けてやり、どおしても指名が取れない嬢は、新しい嬢の採用時に、心を鬼にして退店してもらうことを繰り返していけば、現場はどんどん良くなると言えるのではないでしょうか。これが継続できれば、お客に喜んでもらえる現場に近づいていくと考えます。
複数店舗経営されている場合には、メジャーリーグ〜マイナーリーグの様にお店の格付けをして、嬢の昇格をコントロール管理するのも有効な手段であるのは、熊本の空港系を引き合いに出すまでもありません。
3.割引競争で生き残れるのか
景気低迷で男性諸氏の低価格志向が強くなっていく中で、風俗店はディスカウント傾向を強くしています。特に、リーマンショック後、売上が低迷している風俗店は、ディスカウントすることによって来店人数や回転数を確保しようとしています。
しかし、その結果は悲惨としか言い様がありません。ディスカウントにより人数や回数は増えるかもしれませんが、売上単価が下がり、売上金額は伸びていないのではないでしょうか。ディスカウントしたので、人数が増えても一回あたりの時間が短くなりサービス回数が増加する為に、粗利額が減少している風俗店が増えていると思われます。
ディスカウントにより競争相手からお客を奪うことはできます。これなら実質の売上が増えたことになります。風俗雑誌や無料紹介所等で安い価格をアピールし、初めてのお客が来店しサービスを受ければ、競争相手の売上を奪って自店の売上につなげたことになるからです。
しかし、残念なことに、これも長続きしません。競争相手が黙っていないからです。他店がディスカウントして自店の売り上げが落ちたとなると、対抗してディスカウントして来ます。価格で奪ったお客は、価格で奪い返されます。お店が気にいって来店したのではなく、安いから入ってみただけなので、他店で割引をしていればそちらに行ってしまいます。
一方で、ディスカウントは「麻薬」とも言われています。最初は効いても、だんだん効かなくなり、売上を増やすにはもっと刺激的なディスカウントが必要になって来ます。最初は「安いな」と思った価格も、同じ価格だと次第にインパクトがなくなるからです。
男性諸氏の価格ニーズが強いのは確かです。価格を下げれば、一時的ではありますが、来店は伸びます。しかし、体力消耗戦になって行きます。この体力消耗戦に勝てる自信がなければ、ディスカウントするのは危険と言わざる得ません。
さらなるディスカウントの泥沼が続き、競争相手が閉店したら一息つけるかというと、そうでもありません。閉店した店舗の家主は、空いたままにできないから家賃を引き下げて、次の風俗店を誘致するでしょう。それは大衆店の場合が多いと考えられます。その風俗店は、低家賃を武器に、さらに強烈にディスカウントをしてくることも考えられます。それに対抗していかなくてはならないからです。
4.お客減少時期のマネジメント
物が売れない時代になったと言われています。お客は本当に欲しいものしか買わない時代です。売れないだけでなく、売れ行きに対応するのが難しい時代にもなっています。何が売れるかの予想が当たらないし、急に売れたり、急に売れなくなったりします。
日本はこれから成人男性の人口が減って行きます。高齢化も進みます。それなのにディスカウント合戦をしてサービス時間や単価が下がっていけば、風俗産業の市場規模はどんどん縮小して行きます。
5〜6年前までは、風俗店を作って、そこそこの嬢の写真を並べておけばお客が付いたし、キャンペーンをすればこぞってお客が来ました。風俗店にとってもマーケティングがやりやすい時代だったと言えます。しかし、バブルが崩壊し経営環境は大きく変わっています。今は低成長時代でもあり、いつまたリーマンショックが起こるか不確実な社会環境になっています。
価格設定の考え方を変えていかないといけないのかもしれません。ディスカウントしてもお客は増えない状況になっています。風俗店が不足して需要が旺盛な時は、安ければ多くのお客を呼び込めましたが、今はお店も嬢も余剰な状況で、安くても来店人数や回転数は増えません。増えないと、ディスカウントする事でサービス単価が低下すると粗利額は縮小して行きます。今起こっている売上不振はまさにこれだと言えます。
日本の男性諸氏は、「安ければ容姿は関係ない」とか「安ければサービスが悪くてもいい」とか言う人は少ないですし、「嬢の味」とか「お絵描き」に拘りのある人も多いです。
したがって、今まで通りの、需要が旺盛な時のマーケティングでいいのかを考える時期です。
お客の経済力は減退していますが、精力が減退して風俗に行かなくなった訳ではありません。価格が安ければ何でも良いのではなく、サービスを受けたいと思える嬢で、価格が納得できれば行っているのです。
中洲B店は、当会員の間でも評判が良くリピートする人が多い優良店です。なぜか。どの嬢のサービスも品質が一定の水準以上だからだと思います。嬢の容姿に外れが無い、接客態度がいい、プレイ内容に満足できる、プレイルームが広くて綺麗である、その割りに安いからリピートされているのだと思います。
中洲B店より安いコースを提供している風俗店はたくさんあります。そのお店が繁盛しているかというと、案外と売れていない様です。安くすれば何でも売れるほど単純ではないと言う事でしょう。
言われれば当たり前の事なのですが、中洲B店が強いのは、いい嬢が揃っているからです。理解力のある優秀な嬢を採用し、育てているからでしょう。そういった嬢が、(優秀な)経営者や店長の指導や激励のもとで、女性としての能力を存分に発揮しているからお客が増えて、売上が上がるのだと思います。
永く営業が続いている風俗店の売り上げの大半は、固定客からと考えられます。固定客からの売上を維持しないと、安定的で長期的な経営はできないという事です。背景には、お客はいつも行くお店を決めている(馴染み)ことが多い行動特性があります。
そのいつも行くお店を変更する大きな理由に、「店員の感じが悪かった」である事が多々あります。それ以外にお店に行かなくなる理由として上げられる、「いい嬢が居なくなった」「価格が高い」に勝るとも劣らない多さとなっています。お店の来店者を増やすために、ディスカウントを考える前に、感じのいい挨拶をすること、感じのいい接客をすることが非常に重要であると言えます。
安くないと来店しない訳ではありません。お客は行きたいから行くのです。価格はその行ってみたくなる為のひとつの要素でしかありません。中洲B店の例を上げるまでもなく、素敵な嬢で、サービス内容の割に安くて納得できれば来店する人はまだまだ多いと思われます。もっとおいしい姫を食べてみたいとか、もっと過激なサービスを受けてみたいとかという、リピートニーズはまだまだあります。
さらに、価格に対する不信感もなくして行かなければいけません。価格をあまり頻繁に変更したり、上げ下げの幅が大きいと、お客は価格に対して不信感を持つことになります。価格に対する不信感は、来店意欲の減少につながると考えらるからです。
5.受付でのプロモーション
プロモーションこそ、大きな改革が必要でないかと考えています。風俗雑誌に嬢紹介を載せる効果も低下し、出稿して知名度は上がっても売上につながらないケースが増えているのではないでしょうか。つまり、投下コストに対する効率が落ちてきている状況と思われます。
そこで重要になってきているのが、お店の受付でのプロモーションです。
受付に行く(電話をする)と、店舗によっては多くの嬢の写真が並び(多数の出勤嬢)ます。どの子にするのか、お客は迷ってしまいます。お客は実物を見ている訳ではないので、どの嬢が自分の欲望を満たしてくれる女体なのかは分からないものです。
特にデリヘルでは顕著ですが、お客が受付でどの嬢に入るかを決める比率は80%あると言われています。お客は指名嬢を決めて受付に来る(電話する)よりも、HPで目処は付けていても、受付で店員からの嬢の紹介や説明、待ち時間等を聞いて指名する、またはフリーにする方がはるかに多いと言えます。
事程左様に、風俗店がお客の立場に立ち、お客の心理に訴えて、いい嬢を受付で薦め、決めたくなるようにプロモーションする重要性が高まっています。同じ嬢でも受付時での売り込み方により、売り上げに大きな差が出て来るからです。
したがって、風俗店員はお客の指名代理人になるべきであると言えます。
お客の代わりに、どの嬢がいいかを選択し、その嬢の良さをお客に伝えて、お客が欲しい女体を指名するお手伝いをするのが、これから求められる風俗店の受付要員であると考えます。
迷っているお客は、嬢を選ぶ際に背中を押してくれる心理を買っていると言えます。その嬢を指名したくなったからお金を払うのです。お店への信頼が高く、そのお店の嬢がオキニになれば、価格が高くても継続して来店してもらるでしょう。さらに、受付での店員の対応に信頼があれば、受付で新たに薦められる嬢を指名するでしょう。
6.最後に
本研究室では「風俗産業におけるマーケティングの目的は、販売促進を不要にする事である」と考えています。今のディスカウント合戦は、このマーケティング的発想からはズレていると言わざるを得ません。
風俗店が苦し紛れに、後先を考えずに、力ずくで目先の売上を上げようとしている、かなり無理した状況に思えます。マーケティング的視点から、もう少しお客のニーズに応じた価格設定やサービスがあるべきだと思います。
今後は、先般レポートしました「ポイント還元サービス」もそうですが、「欲動経済学」の適応が有用になってくると考えています。まさにマーケティング上から「欲動モデル」へ発展させるターニングポイントになっていると考えています。
以上、独断と偏見と創作の上、乱文で申し訳ありませんが報告いたします。
May a pinsalo be with you.
研究部 風俗産業・経済研究室長 黒川洋介 (H22.06.04)