〜©日本ピンサロ研究会〜

論文「HIVとは何か」

by KEN氏


 

1 はじめに

 先日,突如としてHIV感染症にかかわる事となった。特に私が感染したわけではない,仕事の都合でである。今までほとんどHIVを含めた性感染症について考えてこなかったが,今回感染症専門の医師や保健所の担当職員等と話す機会に恵まれ,わずかながらHIVというものが見えてきた。
 我が研究会に限らず,ほとんどの風俗サイトがその快楽面のみにスポットを当てて,裏側に潜む危険をあまり考えていなかったように感じられる。もちろん,今後もレポート等この面の充実を計るの当然ではあるが,風俗を世に広めている一当事者として,その危険な部分について考えるのもまた,我々に与えられた責務である。性感染症というのは風俗愛好家,風俗業務従事者にとって避ける事の出来ない大きな課題である。ボッタクリなどと異なり,それは生命活動の根本にかかわる問題であるので,ここで警鐘を鳴らしておきたい。

 

2 HIV感染症

 HIV感染症とは何か?これはHIVウィルスに感染して免疫力の低下した状態の事である。よく言う「AIDS」はこのHIV感染により23の指定された日和見感染症(ひよりみかんせんしょう)を発症してからを言う。つまりHIV感染症の最終段階がAIDS患者,と言う事だ。HIVキャリア=エイズではない。これはかなりの人が誤解しているようだ。
 人間の体には免疫機能が備わっている。HIVはこの免疫機能の一部である血液中の「CD4陽性リンパ球」に取り付き,その細胞内で増殖し,CD4を破壊して行く。ほかのキラー細胞等を破壊するような事はない。しかし,このCD4なる細胞は免疫機能の頭脳に相当するもので,いわば司令官のような役目を司っている。この司令官が破壊されていくため,ウィルスに対する攻撃部隊であるキラーT細胞などが秩序立った攻撃が出来なくなるのである。
 このため健康時には免疫機能により抑え込まれていたウィルス等が暴れだして,色々な感染症にかかりやすくなるのである。これが前出の「日和見感染症」と呼ばれるものだ。そしてこの日和見感染症が発症すると「エイズ患者」と言う事になる。

 

3 HIVの現状

 HIVの発祥はアフリカ大陸と言われているが,はっきりと分かっているわけではない。世界最初のエイズ患者は昭和56年(1981年)6月にアメリカ合衆国で発見された。その時は原因がHIVウィルスとは分からず,約3年後にHIVウィルスが発見された。最初の患者は「同性愛者の男性」であり,それ以後,26人目までの患者がことごとく男性の同性愛者に限られたため,当初は同性愛者に特有の感染症と思われ,事実そのような認識が広がり,未だにそう思っている人もいるようだ。しかし,27人目に女性の患者が現れ,それが誤りであったことが判明した。(これが原因で同性愛者がいわれのない差別を受けた時期がある)
 世界的にエイズ患者数(HIV感染者数ではない)を見ると以下の通りとなる。

2000/11/15 世界保健機構(WHO)発表

地域患者発生状況国別患者数
アフリカ876,009タンザニア112,052
ケニア81,492
ジンバブエ74,782
アメリカ1,030,391アメリカ合衆国733,374
ブラジル145,327
メキシコ42,762
東地中海7,992スーダン2,735
シブチ1,783
欧州229,350スペイン56,491
フランス49,421
イタリア45,605
東南アジア140,246タイ128,606
インド8,438
西太平洋28,872オーストラリア8,354
カンボジア6,005
マレーシア4,118
ベトナム3,877
日本2,066
 2,312,860 

地域の累計と合計の数字が合わないのは,一部未掲載地域(ロシアや中近東)が存在するためと思われるが,はっきりしない。

 前年(2000/11)のWHOの報告では2,201,461人であるから,1年で111,399人増加した事になる。ただ,国連合同エイズ計画(UNAIDS)及びWHOでは潜在的なHIV感染者を含めると3,610万人に達し,さらに,2000年だけで新たに530万人の人がHIVに感染したと推計している。
 では我が国の現状はどうであろうか,初めてエイズ患者が確認されたのは,アメリカ合衆国から遅れる事4年,昭和60年(1985年)に確認された。以来平成12年末までで,HIV感染者3,905名,AIDS患者1,913名,計5,818名が確認されている。また死亡者累計は同時期で1,205名である。
 なお,以上の数字には血液凝固因子製剤による感染者1,432名は計上されていない。血液凝固因子製剤とはいわゆる「血友病」患者に投与される薬剤である。読者諸氏もニュースなどで耳にしたことがあるだろう「非加熱製剤」とよく言われていたがこれは非加熱の(すなわち滅菌処理を施していない)血液凝固因子製剤の事である。それでは以下を参考にしていただきたい。

 都道府県別エイズ患者・HIV感染者(2000/12/31現在)
都道府県別累計報告件数ブロック別
累計報告件数
構成割合
北海道61北海道・東北
165(2.8%)
1%
青森県130.2%
岩手県120.2%
宮城県310.5%
秋田県80.1%
山形県110.2%
福島県290.5%
茨城県474関東・甲信越
4,362(75%)
8.2%
栃木県1532.6%
群馬県1071.9%
埼玉県2824.9%
千葉県4738.1%
東京都2,00734.5%
神奈川県5098.7%
新潟県621.1%
山梨県701.2%
長野県2253.9%
富山県16北 陸
45(0.8%)
0.3%
石川県70.2%
福井県210.4%
岐阜県42東 海
455(7.8%)
0.7%
静岡県1502.5%
愛知県1863.2%
三重県771.3%
滋賀県16近 畿
529(9.1%)
0.3%
京都府661.2%
大阪府3235.5%
兵庫県751.3%
奈良県290.5%
和歌山県200.3%
鳥取県3中国・四国
99(1.7%)
0.1%
島根県50.1%
岡山県90.2%
広島県290.5%
山口県110.2%
徳島県40.1%
香川県80.1%
愛媛県190.3%
高知県110.2%
福岡県71九州・沖縄
163(2.8%)
1.2%
佐賀県20%
長崎県160.3%
熊本県160.3%
大分県60.1%
宮崎県30%
鹿児島県190.3%
沖縄県300.5%
 5818 

 

感染原因別(2000/12/31現在)
 異性間性的接触同性間性的接触その他・不明合計
男性総数166015639714194
うち患者7334364741643
女性総数100206221624
うち患者1530117270
合計総数2662156315935818
うち患者8864365911913
*その他・不明には静注薬物乱用(覚せい剤等)や母子感染が含まれる。
*表中の患者とはAIDS患者を言う。総数はHIV感染者も含まれる。

 

国籍別(2000/12/31現在)
 日本外国合計
男性総数33548404194
うち患者13013421643
女性総数44311811624
うち患者106164270
合計総数379720215818
うち患者14075061913
*表中の患者とはAIDS患者を言う。総数はHIV感染者も含まれる。

 

 以上の統計的数字を見ていると,外国人の占める割合が高い事が分かる。特に女子の場合,70%近くを外国人が占めている。これは本邦在留外国人の人口比から考えると,日本人女性とは比較にならないほどのHIV感染率と言える。別段外国人を差別するつもりは毛頭ないが数字はごまかす事が出来ない冷厳な事実として受け止める必要がある。
 都道府県別に見ても長野や茨城で人口に比し,高い感染率を示しているのはこれと関連するものではないかと推測される。
 感染原因別で見ると,男性同性間の感染と比し,女性同性間の感染がゼロというのが非常に興味深い。
 別の意味で注目してほしいことがある。岐阜県,滋賀県,兵庫県の感染者数である。読者諸氏もご存知のとおり,岐阜県には金津園,滋賀県では雄琴,兵庫県には福原,いずれも一大ソープ街を抱える都道府県である。これらの感染数を見ると,他の都道府県よりも多いわけではない。今回は法令上の制約や建前を語るつもりはない,ソープが本番行為を前提としているのはもはや周知の事実である。HIVを語る上で,最も危険な性交を職業的に行っている彼女ら風俗嬢は基本的に検査を一般の子女以上に,はるかに積極的に受けていると考えるのは自然である。その上で都道府県別感染者数のこの数字というのは,風俗(というかソープ)の安全性を担保する数字と言っていいであろう。
 以上の数字で外国人や同性愛者に対して差別的扱いをするのは浅はかと言うほかない。基本的に外国人も同性愛者もHIVについては敏感になっており比較的積極的に検査を受けているものと推測される。しかし,一般の日本人はまだHIVに対する認識が甘く,まさか自分が感染しているわけはないと,なんの根拠もなく信じており大方の者が未検査である。
 実際最近HIVの話題がほとんど出ることはなく,もう終息していると勘違いしている人が多いようであるが,医療の現場の認識は全く異なる。この甘さ,油断ゆえ,実はかなりの勢いで感染者が増えているのではないか...医師たちはそう考えているようである。少なくとも潜在的感染者は実数の少なくとも5倍,場合によっては10倍程度いる可能性も否定できないのが日本の現状である。

 

4 感染の経路

 HIV感染の主な媒体となるのは体液である。その中でもウィルス量の多い順に言えば,血液,精液,膣分泌液,母乳となる。唾液や涙にも含まれているが,唾液であればバケツ4ないし10杯程度の量がないと感染に必要なウィルス量は得られないと言われている。涙はさらにその10倍の量が必要であり,基本的に感染しないものと認識して差し支えない。
 現在主な感染原因と言われているのは,「性感染」「血液感染」「母子感染」の三つである。基本的にこれ以外での感染はないと考えてよい。
 母子感染は適切な医療上の処置を施せば,実は感染率を1割以下にする事が出来る。また,血液感染も献血等の抗体検査などの医療機関の努力の結果,ほぼ0%に近い値まで感染の危険を排除している。
 基本的にHIVウィルスは感染力が「弱い」結果が重大なので誤解されている部分があるが,ほかの感染症,HCV(C型肝炎)などよりは弱いと言われている。外気に触れると死滅するし,熱でも容易に死滅(これを不活性化と言う)する。
 また,感染するのは傷や粘膜からであり皮膚に付着した程度では感染しない。人の皮膚はウィルスからの防御と言う点で非常に優れたものであり,必要にして十分な能力を兼ね備えている。

 現在最も危険なのが残念ながら我々が最も関係深い「性感染」である。それでは実際の風俗の現場における行為の態様による感染の危険について考えてみる。

 まずキスであるが,基本的には前述の通り唾液による感染の可能性がほぼ否定されている現状では感染しないと考えていいであろう。ただし,口腔に傷などがあり血液が出ている場合などは感染の危険を否定できない。また,歯槽膿漏等の歯周病で出血している場合も感染の危険がある。

 フェラについては若干の危険を伴うものと考えられる。女性から見た場合,射精により口腔中に精液が放出される事になる。当然であるがこれを飲み込めば感染の危険が高まるのは言うまでもない。しかし一般的には吐き出してその後ポリビニールピロリドンヨウ素剤もっと一般的な商品名では「イソジン」で消毒すればほぼ感染を防げるものと思われる。その前に流水により十分洗浄すればさらに理想的である。
 男性の側から見れば,基本的に女性の唾液のみであり感染の危険はないものと考えられる。ただし,前述の通り何らかの要因で血液が唾液に混入していれば危険がある。

 クリニングスもフェラ同様の可能性がある。女性の場合は男性の唾液に何らかの要因で血液が混入していれば危険がある。が膣の中まで到達する事はその構造を考えるとあまりないのではないだろうか。男性の場合は女性の膣分泌液を飲み込む等すれば危険があるものと思われる。しかし,いずれの場合も女性の同性愛者の感染がない事を考慮すれば,ほぼ危険はないと言っていいであろう。

 セックスについてはコンドームを使っていればまず感染の心配はないと言ってもよい。事実コンドームはHIV予防において最も効果があると言われており,医療関係者も肯首するところである。言うまでもないがいわゆる「ナマ」での行為はHIV感染という点では自殺行為に等しい。

 アナルセックスは最も危険度が高いものと思われる。女性の膣は性交に適した機能を有している。男性器が挿入されれば膣分泌液を分泌し,潤滑油のような役目を果たし,その運動をサポートして容易にしてくれる。ところが肛門は本来が排泄器官であり膣のような機能性は持ち合わせていない。そこに男性器を挿入すると膣とは比較にならないほどの摩擦が発生し,その摩擦によって粘膜が傷つき出血する。男性同性愛者にHIV感染者が多いと言うより,アナルセックス愛好者にHIVが多いと言うべきなのである。セックスは危険だからアナルセックスをしているなどと言うのはこれはとんでもない誤解である。コンドームもこのような摩擦を前提に作られているわけではないはずであるから,危険と言うほかない。(是非アナルセックスに耐えうるコンドームを開発していただきたい)

 以上を考察すれば意外に風俗でのHIV感染の可能性は低い事がわかる。ソープでも基本的にコンドームを使用すれば感染を防げるし,ヘルス,ピンサロ等も最近は消毒剤の使用をまめにしており,渋谷などでコギャルをナンパしてエッチするよりもよほど安全性は高いものと考えていいであろう。
 一時の快楽のために感染の危険を犯すのは愚者のする事である。ある病院のマニュアルによれば,手術等の場合,処置前にHIV抗体検査の諾否を患者に確認し,承諾した場合は抗体検査を実施し検査結果により対処するが,拒否した場合は原則として「感染している」ものとみなし対処するそうである。すなわち,不明な場合は最悪を前提に対処すると言う事だ。これなら患者が感染していなければそれに越した事はないが,よしんば感染していても「感染している」ものとして対処しているので問題がない。我々も性生活においてこの医療現場の姿勢は参考にしなければならない。
 今後営業側がとるべき措置は,やはり,風俗嬢の血液等検査の積極的推進が求められる。客を守る以上に彼女たちを守るという意味でも,また,社会防衛の一環として考えてもらいた。感染の事実が早期にわかれば絶望する事はない,AIDS発症の確率をかなり低くする事ができるだ。それについては後述する。さらに店舗を常に清潔に保つと言う事も重要である。常にこまめな清掃を心がけてもらいたい。
 また,客に検査機関発行の無感染の証明の提示を義務付けてもいいであろう。何を突飛な,と思うかもしれないが,将来のためにも考えなければならない。我々の負の遺産を次世代に残してはならないのだ。リスクは避けるに越した事はないのだ。
 場合によっては店舗に対して風適法若しくは感染症新法などで,定期的な検査を義務付けるようにするような施策も望まれる。経済活動に国が嘴をはさむとろくな事はない,規制を緩めるのはよい事だが,必要な規制はしなければならない。店舗型性風俗特殊営業として認めたのであるから,それは国家として為すべき当然の義務と言って差し支えないであろう。

 参考のため,以下に不活性化実験等に基づくデータを掲げる。不活性化とはすなわちウィルスを感染できないレベルまで滅菌することである。
 データを見るときの注意として,この値なら不活性化するのが確実という事であり,これ以下では不活性化しないという意味ではない。確認がなされていないと言う事であり,不活性化するかしないかは分からない,という事である。

 HIVの不活性化実験に基づくデータWHOが示した消毒法
煮沸10分(F)20分
次亜塩素酸ナトリウム100ppm・30分(F)
52.5ppm(M)
0.5% 10分〜30分
グルタールアルデヒド2%・15分(F)2%・10分〜30分
ホルマリン水1%・20分・37C(F)
0.5%(M)
5%・10分〜30分
イソプロピルアルコール50%・5分(F)
35%(M)
エタノール80%・5分(F)
50%(M)
70%・10分〜30分
紫外線・放射線不活性化されない(S)
(F)は北里大学藤本進客員教授等が、試験管内で不活性化実験を行った結果に基づいて示した滅菌,消毒条件
(M)はMartin L.S.等が室温21C〜25C,2〜10分,通常の消毒条件で行った実験結果
(S)はSpirre等の実験結果
 

5 感染したらどうなるか?

 一般的にHIV感染したらもう生きる望みはないと思っている人が多いようだ。不治の病で必ず死ぬものと考えている人がほとんどであろう。
 不治の病であるのは確かである。現在のところ根本的な治療法は確立されていない。しかし感染したからといって落胆する必要も絶望感に苛まれる必要もない。実はHIV感染者の(AIDS)発症率は10%程度と言われている。つまり感染してもみんながAIDS患者になるわけではない。
 感染しても発症せずに人生を全うする事ができる確率の方がはるかに高いのである。前掲の統計を見ればもっと発症の確率が高いように思われるが,ここで見逃してはならないのは潜在的な感染者が顕在化している感染者の何倍も存在していると思われる,という事である。
 潜在的感染者が5倍存在したと仮定しよう。すると現在の総数から割り出すと約3万人弱と言う事になる。そして現在の患者は約2千人,10%以下である。患者に関しては潜在的患者と言うのは存在しないと考えてよい。AIDS患者であれば確実に病院に行っている,発症したら街の開業医で対応できる病ではない。(基本的に指定された病院と言う事になる)そして医師はHIV感染者またはAIDS患者を認知したら感染症新法7条に基づき届出が義務付けられている。よってAIDS患者の数字はHIV感染者と異なりほぼ実数と考えられるのだ。
 つまりはそういうことである。必ず死ぬ病気ではないのである。

 しかしだからと言って甘く見てはいけない,10%以下と言う数字は「適切な医療処置を受ける」という前提でのことである。放置すれば概ね10年で死亡すると言われているのだ。そしてその適切な治療には生活習慣の改善なども含まれ,相応の精神力,忍耐力,継続性を要する。それを生きている間続けなければならないのだ。
 現在の治療法は基本的に「発症を遅らせる」という考え方だ。それも1年や2年ではなく,平均的な寿命まで,老衰死するまでだ。そのために「カクテル療法(多剤併用療法)」という処置がとられる。これは核酸系逆転写酵素阻害剤2剤にプロテアーゼ阻害剤1〜2剤または非核酸系逆転写酵素阻害剤1剤を同時に投与する治療法である。これらはそれぞれに服用間隔が異なったりするのだが,それもきっちり守らなければならない。そして何よりもこれらの薬剤は非常に高価である。純粋な薬価で見ると少なくとも月に十数万はかかるようだ。もちろん保険が適用されるであろうから実際の負担はそこまで行かないが,それでも月に薬代だけで3万4万は当たり前のようである。中には社会保険を利用して会社に露見するのを恐れて自費で治療している人もあるやに聞いているが,その経済的負担は想像を絶するものがある。生きていくためにそれだけの負担がかかるのだ。
 

6 終わりに...

 今回医療関係者から色々伺う機会に恵まれ,如何に自分がHIV,AIDSと言うものについて無知だったか思い知らされた。きっと皆さんも私と同じ程度の認識であろう。HIVは我々が考えているほど容易に感染するものではないし,必死の病でもない。感染したら確実に死ぬという誤った認識は捨てていただきたい。
 だからといってHIVを甘く見てはいけない。感染しても死ぬ確率は10%なのであろうなどという軽い認識を持って貰っても困る。その10%にならないためには,信じがたいほどの負担をしなければならないのだ。実際にHIV感染者と話す機会があったが,その負担が精神的にも経済的にもどれだけ大変かよく分かった。
 健康が何より,はHIV感染者にとって抽象的な観念的な言葉ではない。切実に感じる具体的で実際的な言葉なのだ。今の我々がどれほど幸せなのか,そしてリスクを避けようともしないその姿勢がいかに愚かか,きっとHIV感染者は答えてくれるに違いない。自分だけは大丈夫...根拠のない自信は捨て去るべきだ。

 

 日本ピンサロ研究会 会長 KEN