〜©日本ピンサロ研究会〜

「風俗愛好者のための法律講座 〜実務編その2〜」

by KEN氏

 前回の「実務編」(逮捕から起訴まで)で予告したとおり、今回は続編「実務編その2」として起訴からの流れを簡単に紹介してみようと思う。

 さて、P太君はなんと公然わいせつで起訴されることになってしまった。前歴を照会してみると罰金のマエ(前科)が二つも出てきたのだ。一般的にどの犯罪でも言えるが類似の事件で前科が二つあれば起訴される可能性が高い。罰金は前科ではないと思っている方もいるようだがこれも立派な刑の種類の一つである(刑法9条)。
 交通事件の反則金と罰金が一緒だと思っている方が非常に多いがこれは大きな誤解である。反則金の制度は道交法9章に定められるもので本来的には「反則行為に関する処理手続の特例」であり、交通違反を犯したものは道交法の各罰条により処断されるのが原則である。例えば「過積載」(道交法57条)は6月以下の懲役、10万円以下の罰金なのであるが(道交法118条1項2号の2)特例的に「反則行為」とされているのである(道交法125条1項)。であるから道交法違反でお金を「国庫」に納めてもこれは行政処分(反則金)であり刑罰ではない。
 しかし同じ道交法違反でも略式命令で罰金○○円と言われればこれは刑事処分(刑罰)であり全く意味合いは異なる。略式命令は裁判官に刑を宣告されるわけでもないので軽く考えていればこれは大きな間違いである。

 そう,P太君は前に公然わいせつ(むしゃくしゃして海で「なに」を女子高生に見せた)と育成条例違反(家出少女をナンパしてホテルに行った)の罰金前科があったのだ!あえなく起訴されたP太君,基本的に刑事裁判は身柄を拘束されずに行われるのが原則だが一定の要件に該当する者が勾留される(刑訴法60条)。が実際は勾留されるケースがほとんどである。そう,原則と例外の逆転現象である。
 憤懣やるかたないP太君は裁判所に「なんで勾留したんだ!訳を教えろ!!」と請求することができる(刑訴法82条)あまり意味がないことだが・・・晴れて「被疑者」から「被告人」になったら一つの重要な権利が付与される。国選弁護人請求権である(刑訴法36条)。被疑者の段階でも弁護人を選任出来るのは「実務編」で述べたとおりだが,被告人になると(起訴されると)金がなくとも弁護人を選任できる。

 俺は弁護士などいらない!と言うこともできるが,法定刑3年以上であれば弁護人がなければならない。これを必要的弁護事件という(刑訴法289条)。が実務上すべての事件に弁護人を付しているのが現状である。ちなみに国選弁護人の費用も最終的には被告人が負担するのが原則(刑訴法181条本文)。ただ金がなのに負担させてまた窃盗でもされたら裁判所も面目がないのでチャラにしてくれることもある(刑訴法181条但し書)。
 私選と国選の最大の違いはその料金で,少なくとも5倍の開きがある。私選でなければ裁判が有利にならないと思っているかもしれないが,はっきり言う,私選は金の無駄!!争っている事件ならまだ少しは意味があるが,もし認めている事件であればどっちでも一緒,だいたいの事件はその量刑が決まっていてそれを大幅に超えることも下回ることもほとんどないのが現実である。当事者には人生の一大事でも裁判官,検察官,弁護人には抱えているうちの大量の事件の一つに過ぎない,いちいち精査していたらそれこそいくら時間があっても足りない,悪く言えばベルトコンベアに乗っかって量産されているようなもの,何を言っても何をやってもほとんど判決に影響を及ぼさないのが現実,少し怖い事がホントのこと。

 ただ,どうしても私選にしたいのなら弁護士の見極めが必要である。弁護士もいろいろ専門があって民事,刑事の別だけでなく民事でも家事事件や交通事件の専門家,刑事でも保釈を分捕ってくるのがめっぽう上手なひと,否認事件でキラリと光る人など色々である。専門外の弁護士に委任すればこれは最悪。
 以前私がある事件でやり合った某弁護士は交通事件が専門だったらしいが,子や親がいない場合の法定相続分を分かっていなかったという強者で私も開いた口がふさがらなかった。この時は相手に同情さえ沸いたものだ,高い金払ってこれか・・・これは実話である。だから破産専門の弁護士に刑事事件を任せるようなまねだけはしてはならない,ならば国選の方がよっぽどいい。仕事の出来る弁護士をよく知っているのは実は「極道」だったりする,彼らはいや応なしに民事も刑事も一般人よりはるかに事件を経験している,弁護士を見抜く目は確かである。

 ついでに言っておけば弁護士は否認事件があまり好きではない。社会の注目を集めている事件ならまだしも(ただで受任したりする),そこいらの事件で否認されるのは「たまったもんじゃねぇ!」と思っている。時間ばかりかかって結果はほとんど変わらないからだ。日本の弁護士はほとんど無罪を主張することがなく,情状で,早い話が泣き落としで執行猶予に持っていこうとする。今の裁判の制度では実際これが被告人にとっても最もコストパフォーマンスに優れた裁判の戦い方なのだ。間違っても無罪を勝ちとろうとなど思ってはいけない。

 と弁護人について長くなってしまったので次に行く。実は勾留されていても娑婆に帰れる方法がないわけではない,それは「逃走」であるわけがない,逃走は止めておいた方がいい,99.9パーセントの確率で失敗し袋叩きにあうだけだ。やはり物事合法的に行かなければ。
 そう,「保釈」(刑訴法88条)である。保釈には「必要的保釈」(刑訴法89条)と「裁量保釈」(刑訴法90条)がある。必要的保釈はその名のとおり請求があれば原則として保釈しなければならないという規定。がこれも有名無実化している。現在主流になっているのは裁量保釈の方,ほんとはだめだけど裁判所の裁量(職権)で保釈してあげるというやつである。保釈になりたいなら国選ではまず無理である,この場合はやむ終えないが私選で弁護人を選任するしかない。これは法曹界の暗黙の了解事項である。
 そして保釈許可がでてもすぐにはでれない,俗に言う保釈金,正式には保釈保証金を積まなければならない(刑訴法93条)。金額的には150万円から300万円が一般的な金額である。100万円を下回った例は聞いたことがない。これが用意できなければ娑婆には出れない。

 金がない・・・まだ諦めるのは早い,最後の手段に「勾留執行停止」(刑訴法95条)というものがある。だが,ここで問題がある。勾留執行停止はなかなか認められないということ。保釈よりもさらに難しい。多いのは留置場なり拘置所なりで病気・怪我をしてそれが警察署,拘置所で対処できない場合で外部の病院に緊急に入院させる必要があるときである。通常は病院といえども警察官なり刑務官なりに四六時中見張られているのだが,意識不明だとか,こりゃもうだめだというときに認められることが多い。要はこれでは出れても意味なぁいじゃんなのである。あははははは。

 保釈もダメ,私選弁護人を雇う金もないP太君の運命や如何に・・・次回に続く。