〜日本ピンサロ研究会〜
論文「アジア系エステの社会的考察」

by JT氏


 前程
 今や、エステという看板が存在しない繁華街は存在しないと言っていいでしょう。それが良いか悪いかは別にして、風俗業界に与えた影響は計り知れないものがあると思われます。私の管轄区域内である八王子地区においても、JR八王子駅より徒歩10分圏内に20軒近いエステが存在しており、尚且つその半数以上が3年以上の継続している店舗であることを考えると、風俗の一大勢力として認めざるおえません。しかし、エステの存在そのものは、性風俗産業の一部として社会的に認知されているとは到底思えません。それを社会的見地にたって考察して見ることにより、今後を探ってみたいと思います。

 なぜ、アジア系エステが増殖しているのか。
 現在の日本経済の状況は、かつての生産立国といった面影はまるでなくなりました。それは、複数の要因が重なり現在の状況に至っている訳ですが、基本的な部分で固定資産の過大評価と、所得水準の高騰が原因だと思われます。固定資産の過大評価は、資産価値の目減りを招き、所得水準の高騰は、生産拠点の海外流出を招きました。そしてこの二大要素でデフレーションを引き起こしたと考えられます。しかしながら、東アジア地域における経済的なオピニオンリーダーは、未だ日本である事は疑いの無い事実でもありこの現実は、東アジア地域から労働者の流入を招いているとも考えられます。基本的に、性風俗産業にもこの図式が適用されると考えられます。つまり、デフレーションの対応策としてより、安い労働力を東アジアに求めた結果がエステの増殖という現象を生んだと考えられるでしょう。

 アジア系エステを生んだ日本の性風俗産業の多様性
 日本の性風俗産業は、世界でも希有の存在であると言われています。その理由は、業種の多様性に集約されると考えられ、それを支えているのが、手コキ文化と口淫文化そしてその発展形として擬似本番であるところの素股の存在であるというのは特筆すべき事象でしょう。性風俗は、赤線廃止以降産業としての存続を禁止され個人営業に成らざるおえませんでした。しかし浅草に生まれたトルコ風呂が風穴を開けたと考えられます。個室にスチームサウナがあり、湯女が体を洗ってくれるサービスがある個室サウナですが、それにオスぺ(現在でいう手コキ)といわれるサービスが加わったのが性風俗産業の誕生であると考えられます。その後、手コキが本番に発展し、さらにマット等、技術的発展を遂げ現在のソープランド(基本的には、サービス嬢が部屋を借りている個人営業)に至っています。その後、ファッションヘルス、イメージクラブ、性感ヘルス、ピンクサロン等が出現し日本の性風俗産業が構成されました。ここで重要なポイントは、トータルサービスとして最高峰のソープランド、本番を排除した形でサービスを確立した他風俗という図式が成り立ちます。更に、本番を排除した事により就労年齢層が若年層化した事も性風俗が産業とし て発展した重要な事由の一つである事を認識しなければなりません。このように、本番至上主義からの脱皮が性風俗を多様化し産業として成熟させたと考えられます。この土壌がなければ、エステという風俗は、成立しなかったでしょう。

 アジア系エステが日本の性風俗社会に定着した理由
 第一の理由は性風俗産業の成立条件である、人材が恒久的かつ容易に確保できる事が上げられます。現在、アジア系エステと総称して呼ばれていますが、創世記は韓国エステとして発祥しました。当時は、コリアンクラブの全盛であり(その後フィリピンクラブに取って代わられる)、ある一定の年齢(20代後半か)よりエステに流出せざるおえなかったと考えられます。事実私の通ったエステの就労者は、六本木コリアンクラブ→新宿コリアンクラブ→新宿エステ→八王子エステという経路を経ていました。このように、日本には人材を供給できる環境が備わっていたと考えられます。現在は、状況が変わり留学生のアルバイトが主流になりつつあるようですが、不法滞在者の存在も事実として受け止めなければいけないでしょう。
 第二の理由はサービスの中心をマッサージに置くことにより、性風俗のイメージを排除した事が上げられます。現在のアジアンエステになじんでいる人達には、信じられないかもしれませんが、創世記の韓国エステは韓国特有のキュウリパックのフェイスマッサージ、全身のオイルマッサージ、蒸しタオルを大量に使った足踏みマッサージが標準で、付けたしに、手コキによるサービスがありもちろんサービス嬢は着衣のまま、タッチも不可でした。しかし、逆に考えると性風俗としての進化の余地があったと考えられるでしょう。性風俗に限らずサービス業における存在条件は、顧客を飽きさせない事です。特に技術を持って接客する性風俗にとっては、進化し続けなければ存続し得ないでしょう。それが、エステには必然的に備わっていたと考えられます。更に、バブル後退期とは言え、楽して稼げる風俗というイメージで就労した日本の就労者が増加し、特にヘルス系風俗のレベルが低下し始めたのもエステにとって追い風になった一因でしょう。
 第三の理由はコストパフォーマンスがあげられます。性的サービスが希薄とはいえ、一時間サービスを受けられて、ヘルスと同料金は割安感があると考えられます。これは東アジアに労働力を求めた結果実現した結果でしょう。現在のアジア出張系風俗、アジアパーティー系風俗の低価格化も、東アジアの労働力が流入しなければ実現しなかったと考えられます。
 以上、三点を考えると、コリアンパワー、チャイニーズパワーにおびやかされている現在の日本の経済状況をそのまま反映しているといえるでしょう。

 アジア系エステにおけるサービスの変遷
 サービスが進化するためには、ひとつの条件があります。それは、同一業者の競争相手が増加する事で、それは他店との差別化を計らなければ生き残れないという事を意味しています。エステの場合、それが比較的段階的に行われ、尚且つ日本の景気後退と歩調を合わすかのように、サービスを加味すると実質的なプライスダウンを成し得ていると考えられます。

 サービスの段階的変遷
発祥時 マッサージ重視+手コキ

ステップ1
マッサージ重視+上半身脱衣(オプション導入後標準に移行)+手コキ

中国系エステの出現(抜き無しエステとして)

ステップ2
マッサージ+上半身脱衣+相互タッチ(オプション導入後標準に移行)+手コキ

ステップ3
マッサージ+オールヌード(オプション導入後標準に移行)+相互タッチ+手コキ。このあたりより、ヘルス的要素を取り入れたサービスになる。しかしまだ、蒸しタオルを使用した足踏みマッサージが標準サービス。

ステップ4
おっぱいマッサージなるサービスが出現し性感色が強まる。

ステップ5
水ボディー(ローションを使った、マット性感)出現。全身リップを含め、更に性感色が強まる。

ステップ6
西川口流が出現、現在に至る。

 韓国エステ発祥から十余年、段階的にソフトからハードへ変遷していく過程が如実に表れているといえるでしょう。現実、風俗の一大勢力であるヘルスは、発祥以来ほとんど変化の無いサービスで営業が継続されているのを考えると、風俗業界では異質の存在であると考えられます。この過程の中で重要な事は、中国系エステの登場を機会に一気にエステ隆盛の時代を迎えた事でしょう。当初、マッサージオンリーの抜き無しエステとして登場した中国エステですが、比較的短期間内に性感的サービスを提供するエステと二極分化されます。しかし、創世記特有のマッサージを中心として、下半身もすっきりするという、言わば癒しのサービスが無くなったのも事実であり、業界全体が一気に性感ヘルス的サービスに向いたと言えるでしょう。

 風俗としてのアジア系エステの現状
 エステの現状を一言で表すと、成熟期を越え混迷期に突入していると言えるでしょう。それは、西川口流が出現した事により、非本番系風俗としての認知が希薄になった事に起因すると考えられます。
 現在アジア系エステの業態は以下の通りに分割されます。

抜き無しエステ タイ古式マッサージ、中国系エステの一部など。
非本番系エステ 韓国エステを名称に入れているところに多い。
西川口流エステ 判別が難しいが、傾向として名称に国名を入れない場合が多い。

 一般社会において経済活動の成熟は、社会的基準が定まりそれが一般的に認知された場合を指します。性風俗産業でもまったく同じであり、社会的に認知されているソープ、ヘルス、ピンサロなどの業態はそれぞれ業態なりのサービス及び料金体系の基準が存在しており、その基準内において、経営努力をする事により社会的に認知され存在しています。残念ながらアジア系エステはこの点において欠けているのが現状で、長期的展望にたった経営姿勢を提示できないでいるところに最大の問題があります。

 アジア系エステが社会的地位を確立するために成すべき事
 基本的な事項として、就労者における不法滞在者の徹底排除が上げられます。やはり、法を尊守することが、社会的認知につながる事を当事者は認識しなければいけません。そういった意味で、風適法にそった営業形態に移行する事も必要だと思われます。次に地域社会との共存を実現するために、環境美化の徹底があげられます。路上における無理な客引き、立て看板、散乱した割チケ等、徹底排除が必要不可欠です。地域社会との共存は、地域商業の活性化につながる事を意味し、特に駅前風俗としてエステが生き残るためには、最重要課題であると考えます。駅前風俗としてはピンクサロンが先駆として実践しており一例を上げるとピンサロ優良店の割チケは、ほとんどがティッシュを付属しておりポイ捨ての抑止に役立っていますし、当然、店頭およびその近隣における客引き行為もありません。経営者はこう言った経営姿勢を示すことが必要であり、それが社会的認知につながることを認識しなければなりません。

 アジア系エステの問題点
 最近夕刊スポーツ紙を見ると、西川口流という文字が氾濫しています。アジア系エステも例外ではなく、地域的にみても西川口に限らず首都圏近郊を中心に存在しているようです。しかし、西川口流を看板にする事により性風俗としての問題点が噴出しているのも現実でしょう。それは、本番依存によるサービス技術の低下に如実に表れています。エステの場合、他性風俗とは違い卓越した性技巧をもった就労者によるサービスが受けられる訳ではなく、特に非本番系風俗では欠かせない口淫においては納得ができるレベルではありません。特に中国系エステにおけるその理由は中国に口淫文化が無い事に、起因していると思われますが少なくとも日本において営業するからには、障害を克服し日本のサービス基準に合わせることが必要でしょう。次に上げられるのは、本番系風俗全般に言える事ですが、ビジュアルレベルの低下及び就労年齢層の高齢化が上げられます。これは、本番系風俗の弊害といえますが、遊びとして対価を支払う性風俗は当然ビジュアルレベルは重要な要素です。問題点の最後に上げるのは、設備の老朽化に対する改善が成されない事です。特にシャワー設備の充実は急務で、これらは長期的経営戦略が無い典型的な事象です。そして、これら事象は現在、ロウプライスということが理由に成らないという事を認識すべきでしょう。

 総括
 私は、けして西川口流を否定するわけではありません。しかし、西川口流を導入する事の弊害が余りに多く感じるのです。つまり、目的が本番に変わってしまった事により、アジア系エステ本来の、マッサージと性技巧を楽しむというスタンスが無くなってしまったという事です。確かに、本番を最高のサービスと捉えるならばコストパフォーマンスに優れた性風俗と言えるでしょう。しかし、性風俗を楽しむという観点から見た場合、けして納得できるサービスだとは思えないのです。最後に、アジア系エステがこれら種々の問題をクリアし日本の性風俗文化に根付いて欲しいと節に願うものです。      

 風俗産業・経済研究室長 JT (H16.04.12)

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