by Dr.Robert氏
初めて風俗店の門をくぐったのは、大学生になりたて、まだ19歳になる前の頃、暑い夏の日でした。何冊ものエロ本の情報を比較検討して、なけなしのバイト代を握りしめて飛び込んだ梅田の某店で、心臓が口から出そうな思い‥‥のこもったナニを口で受け止めてくれた嬢は、少しぽっちゃり目の巨乳さんだったように記憶しています。
それから、ちょうど15年経ったこの夏、風俗漬けで汚れ切ってしまった小生に、一大転機が訪れました。小文では、そこで得られた知見を記録しておきたいと思います。チラ裏的駄文の上に超長文ですが、何かの役に立てば幸いです。
「あなたは、本気で誰かを好きになった時のことを覚えていますか?」
小生が15年間で培ってきたプレイスタイルは、人それぞれに異なるスタイルを並べてみた時、おそらく、ある一方の極に位置するものであろう。要するにマグロである(笑)。もちろん対極は、会長を筆頭とする攻め派である。
これには「こっちからあれこれ技を繰り出すのは女房にやってんだから、お店でまでそれをやるつもりはない」といった即物的意義もあるのだが、むしろ思想的な意味があった。
まず、小生はモテたことなど一度も無い。告白されたことももちろんない。今は妻子持ちであるが、今のヨメさんの前に付き合った女性は1人だけ、しかも高校〜大学の1年半程度の話である。中高と(いや大学も、か)男子校であったこともあり、女性の扱いなど知る由もなかった。それは、肉体的なことはもちろん、話しかける方法についてさえ、である。
そんな小生であるから、いくらたぎりまくった血が抑えられず風俗にハマるとしても、どこかで、自信の無さというのか、「頑張っても無理」みたいな諦めがあった。だったら、いっそのこと、「どこまで嬢たちの芸や技を引き出せるか」に、こだわってみよう、と思ったのだ。
その結果は、これまでのレポートをお読み頂ければ感じて頂けるかもしれないが、要は、感謝の念を忘れず、礼を尽くすことである。それが現在のプレイスタイルになっていった。「あれ?お客さん、触らないの?」と言われたことは数多いが、それで損をしていると思ったことは一度も無い。「芸と技」をいかに引き出すか、そのゲーム的快感が焦点であった。これまで通ってきたオキニ達に共通するのは、この点だろうと思う。レポートで「フォーリンラブしてしまいました」とか言ってても、濃密な恋人気分を味わわせてくれるサービスを享受できる相性の良さがあった、という範囲を出ることはなかった。
そしてこの夏、「新しいオキニ」ができた。‥‥そう思っていた。
ところが、である。
いや、今にして思えば予感は無いわけではなかった。
そんな予感というか予兆には気付かないまま、何回目かの指名で入ったある時、ふと、その嬢とのプレイ中にキスをした時に、「本気で嬢に惚れ込んでしまった自分」に気付いてしまったのだ。そして、それを受け入れたとき、目の前に広がる現実は、これまで15年間の風俗愛好家/研究家生活の中で、全く想像だにしなかった変化を見せた。
以下、「本気で惚れ込んでしまったにも関わらず、嬢の気持ちがわからない」状態、いわば「これから嬢を口説きにかかる」状態で発生する事態について、メモしておく。ただし、嬢が小生の感情の存在を知っていることと、嬢の勤務先はソープではないこと、そして嬢は小生がDr.Robertであること+その正体を知っていること、を付記しておく。
通常の恋愛関係の発達・構築の過程では、互いに外堀を埋めて、内堀を埋めて、時には石橋を叩いて渡りつつ、本丸を目指し、陥落して初めて、肌を合わせるわけだ。
ところが、嬢との恋愛の場合、全く逆に、肌を合わせたところから関係をスタートさせることになるのである。
性的快感は往々にして愛情と誤解しやすいものであるが、それは一般的な人物においての話である。我々客サイドはともかく、プロである嬢にそれはあり得ないだろう。だから、肉体関係、ましてやテクニックは武器にはならない。
当然ながら「心を攻める」ことになるわけだが、巷にあふれる「口説きノウハウ」は、ほぼ全てが「肉体関係を持つための道」の序盤としての位置付けである。「風俗嬢だって女の子だ」という意味では、もちろんある程度は参考になるが、そんなことは初めからわかっている。
そして小生が愕然としたこと‥‥源氏名で呼んでいる限りその先はない、ということぐらい、誰にでもわかることだろう。そう!驚くべきことに、愛する嬢を呼ぶ名すら分からないのである!
この「本気で惚れ込んだ自分に気付いてしまった状態」にならないと想像し難いかもしれないが、この「順序が逆である」という事実は、とてつもなく大きい。
先述したような一般的恋愛の各段階は、それ自体が、互いの気持ちを証明する手段になっている。しかし、目の前の現実は、「それ以上は証明のしようがない」状態なのである。つまりこの先「外堀を埋めた」「内堀を埋めた」という確認は、少なくとも通常思いつくような手段では不可能なのだ。このことは「次の一手」が無いことを意味する。
さらに重要なのは、‥‥これはある意味で致命的かもしれないのだが‥‥、仮に、最も基本的なところである「好き」という言葉を言ってもらえたとしても、それが本心なのかを確かめる手段すら無いのである。目を見れば分かる、なんてよく言われるが、相手は「究極のサービス業」のプロなのである。疑心暗鬼になり始めたらキリが無い。もう、信じるしか無いのである。
当たり前である。
ということは、もし口説き落とせたとしても、店に通うべきである、ということでもある。それが礼儀というものだ。だから、ここでは主に、そういう気持ちで店に客として入る場合(そしてそのことを嬢が知っている場合)のことに焦点を当て、店外でのことには触れていない。そもそも店外でホテルに入れるかどうかなど、全くわからないのだから。そして、店に「客」として入り、「プレイ」を始めると、これまでと違った状況が展開されるのだ。
今まで15年、「最高のパフォーマンスを引き出すため」に、「最高の礼を以て」接し、嬢の体は本当に大切に扱ってきた。しかしそれは、喩えるなら、「商品は大切に扱って下さい」に近い、こちらの気の持ちように関する話なのである。
それが全く別の、こちらの心構えとは無関係な「絶対的価値」を具備した存在に変わってしまう。突然、「大切に扱うべきもの」が「大切なもの」に変わってしまうのだ。そしてその事実は、プレイに入ったときに威力を発揮されてしまう。ついこの間までじゃれあっていた裸体が、後光が射しているかのような神々しい存在に変わり、その上で、「外堀すら埋まっているのかどうかわからない」という現実に直面する。その結果、「相手の本当の気持ちを知らないのに、触れていいのか」という自問に苦悩するのだ‥‥プレイ中なのに。
惚れ込んだ自分に気付き、それを受け入れた小生は、まさに何年ぶりであろうか、本気で愛し合おうとした。少なくともこちらからはそのようにした。攻めながら脳のネジが飛んだのなんて、本当に久しぶり、10年以上ぶりではなかろうか?(笑)
しかし小生の場合は事態はさらに悪かった。長年のマグロ修行の結果、「童貞か」と自分でツッコミたくなるようなレベルにまで哀れに退化した自分の指やら舌やらを呪うハメになったのだ(正直、キスする順番?すらわからなくなっていた)。
そんな稚拙な自分自身に心で号泣しながら、なんとか高まってもらった(らしく見える状態になった)。しかし、今はあくまでも、プレイ中の客と嬢なのである。
いくら合体したくたって、存在自体が本当に大切な相手なら、ルール違反はできない。その肌は、お仕事として提供してくれているだけであって、本当は、触れることすらその資格があるかどうかわからないのだ!
通常の恋愛関係の中での「普通の流れ」でプレイが進んだとしても、ルールの下にある限り、一つにはなれないのだ。
いくら仲良くなっても、「客」である限り、同様の立場(嬢内部のランキングがほぼ等しい)の人物はいくらでもいてるはず。それを受け入れられないとダメなのである。これはある意味、「キャバ嬢とのアフター」というジャンルと共通する話だろうから、詳述はしないが、ここでも「順序が逆である」という事実は重くのしかかる。
小生の場合、さらにもう一つ重要なポイントがある。それは「双方に愛すべき家庭がある」ということだ。仮に本件が首尾よく進んで相思相愛の関係になったとしても、お互いにどんなに頑張っても互いの「1位」にはなれないのである。これは、一般的な不倫の最も基本的なルールなのかもしれないが、こと相手が嬢の場合、こちらの心構えとしては、ひときわ重要さを増すであろう。
従って、言えることは、「嬢」の中で「本」という単位で数えられるであろう「お客さん」リストの上位ではなく、一人の女性として「人」で数えるリストの末席に加えてもらえることを望む、ということができなければ、そもそも最初から資格は無いということだろう。
他にも細かいことはいろいろある。例えば、「長時間コースで入りたくなるので財布が瀕死になる」「言ってはいけないフレーズがある」「風俗漬けで汚れてしまった自分では対応できず男子中学生に戻ってしまう」「いくら私生活の情報を話してくれたとしても特定するようなWeb検索を絶対にしてはいけない(教える気になるまでひたすら待つ!)」等々。しかし、小文で強調した「順序が逆である」ということが全てに共通する原因であることは間違いない。このことは、いくら強調してもし過ぎではないだろう。
‥‥以上です。
この原稿を書いている今は、まだ、嬢から「好き」とすら言ってもらえていません。もちろん携帯も知りません。それに、それなりに経験を積んで、パネルのぼかしやモザイクを透視することはできないまでも、それなりに見る目を培ってきた小生が惚れ込んだ嬢です。芯の通った、賢い女性です。ついでに言うと、この小文も、実は発表前に読んでもらっています。それがどう影響するのかはわかりませんし、冷静に考えると、このまま完敗する可能性のほうがおそらく大きいと考えるのが普通でしょう。それでも、今、小生は男子中学生ですから、前進あるのみなのです(笑)
もう、レポートを上げることはないでしょう。‥‥ただ、一応は、かつて研究部長を仰せつかったことのある小生ですから、風俗学研究者として、論文などを執筆することがあるかもしれません。しかし、この嬢以外に入ることは考えられませんので、そんなレポートに意味はありません。
そして、年齢に伴う肉体の衰えの所為かもしれませんし、あるいは単に風俗に飽きたのかもしれませんが、いずれにせよ直感的に分かることが一つ。進行中の本件であれずっと先のことであれ、この嬢と別れたら、その時が、「風俗通い」の終焉を意味しているであろうことは間違いないでしょう。「みちのく一人旅」で言うところの「お前が〜俺には最後の女〜♪」というやつです(←微妙に違う)。
ということで、本研究会の「表舞台」からは引退します。‥‥納会でお会いするかもしれませんので籍は置いといて下さいね(笑)。>会長
最後に、某SNSで見つけた文言を、以下に引用して、筆を置きたいと思います。
事務局 局付教導研究員 Dr. Robert (H21.10.11)彼女が風俗店を辞める とき
それは 、この店にいた過去を消し
普通の生活に戻ることを意味する
その「消さなければならない過去」の中に俺もいる
俺は....彼女がこの先「消さなければ先に進めない」過去の中にいた