風俗愛好者のための法律講座 〜その5〜

 

風俗関連諸法(風適法)Ver.2.0 by KEN氏


4 規制及び遵守事項等(法3章,4章)
 本法の核心部分,旧法では対応できなかった部分も現状に応じ,また,将来へ対応するため,改正により更に詳細に規定されている。

◎映像送信型性風俗特殊営業に関するもの

○広告等の規制(第31条の8第1項)

1 映像送信型性風俗特殊営業を営む者は、その営業につき、次に掲げる方法で広告又は宣伝をしてはならない。

(1)次に掲げる区域又は地域(広告制限区域等)において、広告物(常時又は一定の期間継続して公衆に表示されるものであつて、看板、立看板、はり紙及びはり札並びに広告塔、広告板、建物その他の工作物等に掲出され、又は表示されたもの並びにこれらに類するものをいう)を表示すること。

@ 保護対象施設の敷地(保護対象施設の用に供するものと決定した土地を除く。)の周囲二百メートルの区域

A 法2条6項5号の営業について2項の規定に基づく条例で定める地域のうち当該映像送信性風俗特殊営業の広告又は宣伝を制限すべき地域として条例で定める地域
ア 広告制限区域等において、人の住居にビラ等(ビラ、パンフレット又はこれらに類する広告若しくは宣伝の用に供される文書図画をいう。)を配り、又は差し入れること。
イ アに掲げるもののほか、広告制限区域等において、ビラ等を頒布すること。
ウ 広告制限区域等以外の地域において、人の住居(十八歳未満の者が居住していないものを除く。)にビラ等を配り、又は差し入れること。
エ ウに掲げるもののほか、広告制限区域等以外の地域において、十八歳未満の者に対してビラ等を頒布すること。
オ アないしエに掲げるもののほか、清浄な風俗環境を害するおそれのある方法

2 映像送信型性風俗特殊営業を営む者は、その営業につき広告又は宣伝をするときは、十八歳未満の者が客となってってはならない旨等を広告又は宣伝を、文字、図形若しくは記号又はこれらが結合したものにより行う場合にあつては営業所に立ち入つてはならない旨等の文言を公衆の見やすいように表示することとし、音声により行う場合にあつては客とつてはならない旨等を公衆のわかりやすいように音声により告げることにより明らかにしなければならない。
映像送信型性風俗特殊営業を営む者がその営業につき当該事務所周辺に表示する広告物であつて、当該映像送信型性風俗特殊営業の名称又は当該映像送信型性風俗特殊営業の種類のみを表示するもの(当該映像送信型性風俗特殊営業の事務所の所在地を簡易な方法により表示するものを含む。)については、前項の規定にかかわらず、十八歳未満の者がその客となつてはならない旨を表示するものとして国家公安委員会が定める標示を公衆の見やすいように表示することができる。
映像送信型性風俗特殊営業を営む者が法28条9項の規定により十八歳未満の者がその客となつてはならない旨の文言を事務所の入り口に表示している場合には、前二項の規定にかかわらず、当該映像送信型性風俗特殊営業を営む者がその営業につき当該事務所の入り口周辺又は内部に表示する広告物に十八歳未満の者がその客となつてはならない旨の文言又は前項に規定する標示を表示しないことができる。

 

○禁止行為

1 18歳未満の者を客としてはならない(法31条の6第2項)

2 18歳未満の者が通常利用できない方法による客の依頼のみを受ける場合を除き,電気通信事業者(NTT等)に対し,当該映像の料金(Q2等の情報料)の徴収を委託してはならない(法31条の8第3項)
 アクセスするのに,18歳未満の者に利用できない方法を用いていれば(そのような方法があるかは別問題として)情報料の徴収を委託できる。また,電気通信事業者以外であれば原則として徴収の 委託ができる。(信販会社等)

3 客が18歳以上であることの証明又は18歳未満の者が通常利用できない方法により料金を支払う旨の同意を得た後でなければ映像を伝達してはならない(法31条の8第3項)

・良くある「あなた18歳以上ですか?Yes or No」の方法は証明としては弱いと思えるが・・・本法の目的から言えば(業者の保護が目的ではない,少年の健全な育成が目的なのだ,これは大原則)これは証明にならないと言っていいのではなかろうか。私見としてこの方法は行政処分の対象になる可能性が全くないわけではないと考える。
 そのため,ほとんどのサイトがクレジットカードによる支払を選択しているのは賢明な措置である。これは後段の「18歳未満の者が通常支払う事のできない方法で料金を支払う旨の同意を得る」に該当し,本条文の禁止行為をクリアするに必要にして充分な方法である。
 ここで問題となるのがアクセスして最初に現れる,トップページの画像等である。ここに規制対象の画像があればこれは問題である。なんら年齢を確認せず,かつ,支払い方法の確認もせず映像を送信していることになり,たとえメインページにアクセスできなくても厳密に解釈すればその時点で違法な行為となる。これで行政処分を受ける可能性は非常に低いが,法理論としては可能であることを知っておいていただきたい。

4 自動公衆送信装置(サーバ)の全部又は一部を営業者に提供しているサーバの設置者(プロバイダ)は記録媒体(ハードディスク等)に営業者がわいせつな映像の記録をしたと知ったときは,送信防止のため必要な措置を講ずるよう努力しなければならない(法31条の8第5項)
 これは営業者(サイトの運営者,管理者)ではなく,プロバイダ等に課せられた「努力義務」若しくは「努力目標」とも言うべき規定である。なお,設置者が送信防止の措置を講じなければならないのは「わいせつ」な画像だけである。これは刑法の「わいせつ物頒布等」に該当する映像のことである。規制対象の画像のことではないので念のため申し添える。

 

○指示等

●営業者に対しなされる指示等(法31条の9第1項)

 本法又は本法に基づく命令若しくは条令の規定に違反したときは,違反行為時の事務所を管轄する公安委員会は必要な指示ができる。

●設置者(プロバイダ)に対しなされる勧告(法31条の9第2項)

 営業者が客にわいせつな画像を見せた場合において,送信防止のために必要な措置を講ずる義務の遵守を怠っている認めるときは,当該設置者の事務所を管轄する公安委員会は必要な措置を執るべきことを郵政大臣と協議の上,理由を付した書面により勧告できる。

 為しうるのは「勧告」であり,指示,命令等はできない。指示,命令等はそれに反すればさらなる行政処分又は刑罰が課せられるが,勧告は行政処分ではなく,行政指導でありなんら法的拘束力をもたない。

行政手続法32条1項(行政指導の一般原則)
 行政指導にあっては,行政指導に携わる者は,いやしくも当該行政指導機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されることに留意しなければならない。

 上のとおり行政指導(勧告)は行政処分(指示.命令等)とその性格を大きく異にし,いわば行政庁の国民に対する「お願い」と言った性格のものである。勧告に従うか否かは設置者の意思により,またそれのみによって実現されるものであり,当然に自力執行力(義務の履行がなされないとき,行政庁がこれを強制し,もって義務の履行を実現させること)は有せず,勧告内容を行政庁が一方的に実現することはできない。
 なお,勧告に反した場合の,罰則若しくは命令等は本法に規定されていない。

 

○命令(法31条の10)
 営業者が,18歳未満の者が通常利用できない方法による客の依頼のみを受ける場合でないのに,電気通信事業 者に対し,当該映像の料金の徴収を委託したとき又は客が18歳以上であることの証明又は18歳未満の者が通常利用できない方法により料金を支払う旨の同意を得ていないのに映像を伝達したときは,違反行為時の事務所の所 在地を管轄する公安委員会は,18歳未満の者を客としないため必要な措置を執ることを命ずることができる。 ただし,指示,禁止ともに,処分移送通知書の送受があったときは,処分権は送付先公安委員会が有し,送付元公安委員会は処分権がなくなる(法31条の11)。

 必要な措置を命じれるのだから,現状(18才未満が客となっている現状)を是正する措置を命じることは当然として,営業の禁止や廃止(現状を是正する見込みがないと判断すれば)を命じることもまた許されると解される。
 他の性風俗特殊営業に対する行政処分は,営業の禁止や停止,廃止等条文で明確に規定されているが本営業に関する行政処分は「必要な措置」とされ,行政庁にかなりの裁量(便宜裁量又は自由裁量)が与えられている点には注意すべきである。これはインターネットがいまだ進化を続けているものであり,予見しえない状況にも臨機に対処するために裁量の範囲を広げているためと思われる。
 なお,本法により規制を受けるのは「有料」のサイトであり,無料のサイトは対象外である。一部に見られる広告料収入で運営しているサイトは一見無料であり,規制の対象外と思えるが,やはり広告料による収入がある以上,「営業」しているとみなすべきであると考える。特に利益確保が目的ではないだろうが,恒常的な収入がありそれをもって 運営している以上営業と言える。営利ではないと言えないこともないが,アクセス回数の増加を呼び掛け,さらなる広 告料収入の増加を目的にしている以上,全く営利ではないと言うのは少し厳しい気がする。実際に利益を受けているか否かは問題ではない,世の中赤字企業はいくらでもあるのだ。その行為を行う意思の問題なのだ。ただこれは自分の私見であり,実際に裁判所がどう判断するかは未知数である。また,警察庁は現在のところ上のような形態は本法に言うところの「営業」にあたらずとの立場をとっている。

●処分移送通知書の送付等
 概ね無店舗型と同旨


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