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研究ノート「類似ラブホテルの存在」

by 黒川洋介氏




 先日、「長野県を中心にラブホテルを経営する宗教法人が、国税局から所得隠しを指摘された。」との記事を読んだ。ホテルの休憩料などの一部を、非課税のお布施として申告していたらしい。幼稚園から大学まで学校経営を行っている宗教法人は数あれど、店舗型性風俗関連特殊営業第4号ラブホテルを経営しているのは、やはり違和感を感じる。もっともあの任天堂もラブホテル事業に取り組んでいた(失敗して撤退)のだから、事業の多角化としてはそれほど奇抜とは言えない。宗教法人がラブホテルを経営しているのか、ラブホテルを経営して儲ける為に宗教法人格を隠れ蓑に使っているのかは、謎である。が、ほとんど休眠状態の宗教法人で、長野県の食品会社がその宗教法人を買収していたとの報道もあり、押して知るべしである。
 くだんのラブホテルの特徴は、格安、内装がイマイチ、入口に観音様の像があることらしい。長野市内だけでもこの特徴にあてはまるラブホテルは10軒程あるようだ。国税局の発表では、長野、群馬、新潟、岐阜、静岡の5県でラブホテル23軒を経営している。甲信越地域で活動されている日ピン研会員諸氏の中には、使われた方も居るのではないだろうか。

 主張では休憩料はお布施である。会員の方がデルヘル嬢を呼んで、室内で肌を合わせたり体を重ねたりとかおやりになる行為は、神社に参拝して賽銭箱にお金を入れて柏手を打つのと同じ行為と言えるのかもしれない。Wikipediaによると、性愛(カーマ)は古代インドでは人生の三大目的のひとつと考えられ、カーマ・スートラとしてカーマ探求の重要性が説かれている。その意味では、日ピン研会員諸氏の日々の活動の体験レポートは、現代版カーマ・スートラとして重要な文献となる可能性がある。カーマは、ヒンドゥー教における愛の神でもある。男女の性行為が教義として神・仏に近づく神聖な行為であるとするならば、休憩料がお布施であるとの主張も(納得は出来ないが)成り立つことになる。
 神聖な行為
  神カーマ(愛)は美男子で、ラティ(快楽)、プリーティ(喜び)を妻とする。釈迦も性欲に打ち勝つには苦労したのか、カーマは、悟りを開く修行の邪魔をした魔王(マーラ)とされている。カーマ・スートラでは女性の誘惑方法を知ることから愛を説いているとも解釈できる。聖書の日本語訳では「アダムは妻エバ(イブ)を知った(創世記4章1節)」と初夜を表現しているが、女を知っている(性体験がある)との表現はここから派生したのかもしれない。

 さて、ラブホテルの歴史は古く、江戸時代の出会い茶屋まで遡り、その情緒風情はさいとう・たかおの劇画に詳しい。終戦後の昭和20年代には、温泉マークを付けた連れ込み旅館として発展し、昭和30年代後半から電動ベットが登場しラブホテルの建設ラッシュとなる。昭和48年の目黒エンペラーの開業がマスコミを賑わし、女性誌にてラブホテルと表現された事でひろく認知され、以降ラブホテルとの呼び名が一般化する。
 ラブホテルが規制されたのは、昭和59年に改定された風営法「個室付浴場業及びモーテル営業に、ストリップ劇場、類似モーテル、ラブホテル、アダルトショップ等を加えて風俗関連営業とし、営業等の届出、禁止区域等の規制を定める」からである。ホテル・旅館は風営法だけでなく、建築基準法や旅館業法などでも規制を受けているが、風営法でラブホテルを名乗るための設備要件は7項目ある。そのうちもっとも特徴的な要件は、「動力で振動又は回転するベット」「横臥している人の姿態を映すために設けられた鏡(面積が1u以上)」があることである。
 昭和59年に改定された風営法
  社会現象と化した「ノーパン喫茶」は、この改定の施行(昭和60年)により営業が出来なくなり姿を消している。ほとんどの方はご存知無いと思われるが、ミニスカートでパンティーを履いていないのである。その当時の興奮・期待感たるや想像に難くないであろう。
 ラブホテル・モーテル・レンタルルームは、デリヘルの躍進と共に届出店舗数を伸ばしてきた。平成18年の改定風営法により一時期は減少していたが、ここに来て新たな規制強化の問題が発生している。
 現状、届出ラブホテルの店舗数は約4000店である。しかし、各都道府県警察本部による調査によると、届出ラブホテル施設と同様な外観で類似していると認められる無届けのホテルが約3500店存在する(データはないが数万軒存在するとも言われる)。届出していないこの類似ラブホテルは、営業禁止区域に建設(予定)されている事が多く、地域住民の建設反対や、警察への取締要望や苦情が多数寄せられている。
 類似ラブホテルとして指摘されているホテルの特徴は、「入り口付近に休憩料金を表示している」「外観が著しく派手又は奇異」「客室の満室表示をしている」があげられる。つまり、会員諸氏が利用されているホテルのほとんどは、類似ラブホテルと考えて間違いない。
 さらに、旅館(ビジネスホテル)として建築申請しているにも係わらず、認可後に内装を改造して営業している外観は一般のホテルと区別がつかない偽装ラブホテルも増えてきている。この為に、各都道府県警察本部は、風営法だけでなく建築基準法 旅館業法も織りまぜながら規制強化に動いている。
 また、多くのビジネスホテルやシティホテルが、デイユースプランとして昼間に部屋を提供してるが、これが「異性を同伴する客の休憩の用に供する施設」として風営法に抵触するのではないかといった指摘も一部では出ている。

 こうした背景から、類似ラブホテルの存在によりこれ以上の規制強化が経営圧迫に結びつかないように、全旅連等業界団体の自助努力として、フロントには、宿泊者その他の利用者の出入りを容易に見ることができないような囲いを設けたり、また相対する宿泊者等に直接面接できないような構造等の措置を講じないことや、デリバリーヘルスなどの業者との客室契約を締結しない等の環境浄化に取組んでいるホテル・旅館が増えて来ている。
 経営圧迫
  風営法の規制が強化され風営法第4号営業の届出の対象となった場合、金融機関からの融資が受けられなくなる、中小企業助成金などの公的資金が申請出来なくなる、規制から外れるために設備の改築が必要となる等の経営危機に直面する。また、地域住民が自治体と協力して、児童公園を設営したり、病院・診療所(都道府県条例で200m以内は営業禁止区域に指定されている場合がある)を誘致したりして、営業できなくなるリスクが高まる。

 地方に遠征や出張に行かれる日ピン研会員諸氏は、主にビジネスホテルを活用しデリヘル嬢を呼ばれていると思う。しかし、業界団体のこうした環境浄化活動によりデリヘル嬢の派遣が難しいホテルが今後さらに増えてくると推察(危惧)される。

 以上、独断と偏見の上、乱文で申し訳ありませんが投稿いたします。

 May a pinsalo be with you.   

 研究部 風俗産業・経済研究室長 黒川洋介 (H21.06.11)

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