〜日本ピンサロ研究会〜

論文「性感染症について 性器クラミジア感染症」

by クフィル氏


 性器クラミジア感染症は、日本のみならず世界中に蔓延している最も患者数の多い性感染症である。クラミジアに感染している人は、そうでない人に比べ、HIVに感染する確率が3〜4倍増すという。

 クラミジア(Chlamydia trachomatis)は、トラコーマの病因であるが、眼瞼結膜と同質の円柱上皮がある尿道、頸管、咽頭のも感染する。眼から眼への感染は、日本では水道などの衛生環境の向上により減少し、また、眼の感染は自・他覚が容易で受診機会があるため、結膜感染は抑制された。尿道、頸管の感染は、分泌物などの炎症症状が軽度で自・他覚されず、受診機会を欠いて長期感染が持続して、感染源となる場合が多い。
性器クラミジア感染症は、クラミジアが性行為により感染し、男性では尿道炎と精巣上体炎を、女性では子宮頸管炎と骨盤内炎症性疾患を発症する。
 クラミジアは主に泌尿生殖器に感染し、その患者数はすべてのSTDのうちでも最も多い。男性、女性ともに無症状の保菌者が多数存在するため、無症候感染者を発見することが蔓延を食い止める最良の策である。
 男性では、クラミジアによる尿道炎は非淋菌性尿道炎の約半数を占め、淋菌性尿道炎におけるクラミジアの合併頻度は20〜30%である。男性におけるクラミジアの主たる感染部位は尿道で、精巣上体炎の原因ともなるが、前立腺炎においてクラミジアが原因微生物になり得るか否かについては、未だ議論が多い。
 女性のクラミジア性器感染症は容易に腹腔内に浸透し、子宮付属器炎や骨盤内炎症性症疾患(PID)を発症する。その上、無症状のままで卵管障害や腹腔内癒着を形成し、卵管妊娠や卵管性不妊症の原因となる。さらに、上腹部へ感染が広がると、肝臓表面に急性でかる劇症の肝臓周囲炎(Fitz-Hugh Curtis症候群)を発症する。また妊婦のクラミジア感染症は絨毛膜羊膜炎を誘発し、子宮収縮を促すことになり、流早産の原因となることもある。分娩時にクラミジア感染があれば、産道感染による新生児結膜炎や新生児肺炎を発症させる。このように症状、病態が男性のクラミジア感染症と比べ、女性の場合は合併症や後遺症など、きわめて複雑である。

症状と診断

a 男性尿道炎
 男性クラミジア性尿道炎は、感染後、1〜3週間で発症するとされるが、症状が自覚されない症例も多く、感染時期を明確にしえない場合も多い。淋菌性尿道炎と比較して潜伏期が長く、発症は比較的緩やかで、症状も軽度の場合が多い。男性尿道炎の分泌物の性状は、漿液状から粘液性で、量も少量から中等量とすくなく、排尿痛も軽い場合が多い。軽度の尿道?痒感や不快感だけで、無症候に近い症例も少なくない。尿道を陰茎腹側より外尿道口に向かって圧迫することにより、分泌物を確認できる場合もある。確認できない場合でも、初尿沈査中に白血球を認める。注意すべきは、男性においても無症候感染が増加していることである。20歳代の無症状の若年男性における初尿スクリーニング検査で、クラミジアの陽性率は4〜5%とする報告もある。
 男性クラミジアの検出法としては、初尿を検体とし、EIA法のIDEIA PCE Chlamydia法、核酸増幅法であるPCRなどによって行う。近年、PCR法におけるクラミジア検出法の問題点として、検体中の血液や粘液などの増幅阻害物質が偽陰性をもたらす可能性について報告されている。その対策として、測定検体を10倍程度希釈することにより阻害物質の影響を少なくする方法がとられるが、この場合は、測定感度が低下することに留意する必要がある。

b 精巣上体炎

 男性クラミジア性尿道炎の5%程度に精巣上体炎を併発する。中年以下の精巣上体炎の多くはクラミジアが原因とされる。クラミジア性精巣上体炎は、他の菌による精巣上体炎に比べ腫?は軽度で、精巣上体尾部み限局することが多く、発熱の程度も軽いことが多い。クラミジア精巣上体炎の診断は、クラミジア性尿道炎に準じ、初尿検体を用いて行う。

c 咽頭感染

 オーラルセックスなどにより、咽頭にクラミジアが感染することがある。女性性器にクラミジアが検出される場合は、無症状であっても10〜20%は咽頭からもクラミジアが検出される。慢性の扁桃腺炎や咽頭炎のうちセフェム系薬で治療し、反応しないものの約1/3にこのようなクラミジアによるもにが存在するが、性器に感染したものに比べ、治療に時間がかかると言われている。

治療法

・薬の種類
 マクイロライド系薬またはニューキノロン系薬のうち抗菌力のあるもの、あるいはテトラサイクリン系薬やセフェム系薬、アミノグリコシト系薬などは、クラミジアの陰性化率が低いため、治療薬とはならない。投与薬剤は、@アジスロマイシン(ジスロマック)、Aクラリスロマイシン(クラリス・クラリシッド)、Bミノサイクリン(ミノマイシン)、Cドキシサイクリン(ビブラマイシン)、Dレボフロキサシン(クラビット)、Eトスフロキサシン(オゼックス・トスキサシン)などがあるが、B〜Eは妊婦には投与しないのが原則である。

・治癒の判定

 投与開始2週間後の核酸増幅法か、EIA法などを用いて病原体の陰転化の確認による。血清抗体検査では治癒判定はできない。
 確実な服薬が行われないための不完全治癒の可能性も少なくないので、治療後3〜4週目にクラミジアの病原検査を行い、治癒を確認することが望ましい。

・予後

 確実な薬剤の服用とパートナーの同時治療がありば、再発はないと考えられる。

その他

1 クラミジアの性器感染は、セックスパートナーが複数であるような女性、特にティーンエイジャーにおいては、感染率が25%と極めて高い。1993年のアメリカ合衆国のCDCのSTD治療ガイドラインは、20歳未満の受診女性すべてに対してクラミジア病原体検査を行うべきという方針があった。しかしながら、その後のクラミジアの大流行への対応として、また、HIV感染予防の一環として1998年度のおいては、25歳以下のすべての女性とピル服用者、25〜30歳でパートナーが変わった人、複数のパートナーのある人は、すべて検査対象であるというように変わっている。それだけクラミジア感染者が多いこと、とりわけ若年女性の感染者の治療に留意しているものと思われる。

2 各検査法の感度は、基本小体の数から見ると、以下のとおりである。

PCR 2〜4(基本小体)/assay
IDEIA PCE 90(基本小体)/assay
DNA probe 5〜6×103(基本小体)/assay
 なお、女性尿においても検出可能であるとする新しい核酸増幅法が開発され、検討評価が進み、実用化も近いと思われる。

※ 性感染症「性器ヘルペス」について につづく

 中・四国支部長 クフィル (H16.11.29)

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