〜©日本ピンサロ研究会〜

論文「ピンサロにおける段階的不況の分析と、それに対する対策」

by JT氏


はじめに

 現在、日本の経済状態は低成長どころか、後退し続けているのが現状である事は間違の無い事実である。そしてその波は確実にサービス業にも及んでおり、飲食業においてもその症状は顕著に現れ、段階的、構造的な客数減少と客単価の低下のダブルパンチにあえいでいる。その原因は消費動向の衰退によって引き起こされるが、性風俗産業もその例外ではない。
 ここでは、私達のオアシスと言うべきピンサロを例にとり、段階的不況の構造とそれに対する対策を分析し今後の動向を探って見たい。

 

前提

 ピンサロは、完全パック制度と言う接客業界では画期的制度を採用しているため、客単価による売上に対する影響は無いに等しい。つまり、売上=客数と考えられる。(詳しくは<ピンサロにおけるデフレ現象が及ぼす影響とその対応>を参照)これを前提に、段階的不況とその対策を分析する事とする。

 

ピンサロにおける段階的不況

 消費の停滞は、経済的種々の要因が重なり発生するが最終的には個人消費の落込みが、工業生産を支える事ができなくなりそれが、個人所得に反映された時に不況となる。風俗産業も例外ではなく、その波に飲みこまれる事になる。しかし、風俗産業の中でも基本的に個人消費である性風俗は、社会状況に左右され難いと考えられる。すなわち、個人所得の成長が鈍くなった時点で消費の停滞が始まるが、性風俗産業、その中でもコストパフォーマンスに優れたピンサロ、特に優良店(以後Aクラスと記す)には影響が少ないと考えられる。しかし一般の消費動向と同様に、その影響はコストパフォーマンスだけに集客を頼っている店(以後Bクラスと記す)から徐々に現れてくると考えられ、これをピンサロ不況の第一段階と定義できる。
 現象としては、Bクラス店は、営業力が弱いためディスカウントプライスを中心に営業展開を図り、Aクラス店は、ソフトの充実など企画力で営業展開を図り客数を確保する。これこそが経済構造の中で、警戒しなければならないデフレーションの入り口だと考えられる。
 次に構造不況が進み、個人所得のレベルがマイナス成長になると、プライスダウンの流れがAクラス店まで広がり業界全体に停滞が進行する、これをピンサロ不況の第二段階と定義する。現象としては、Aクラス店の収益率の悪化とBクラス店の淘汰が上げられる。

 Bクラス店の淘汰はユーザーにとって悪い事ではないが、社会における業界のボリュームを考えると決して好ましいとは言えない。それは、業界の社会的認知はその業界規模によって評価されるからである。

 

Aクラス店の収益率悪化とそれがもたらす影響

 積極的にプライスダウンを展開し客数を稼ぎ売上を確保する方法は、不況下において有効な営業手段である事は間違い無いがそれがもたらす影響は計り知れないものがある。それは、前書したように企業経営における最大の危機である収益率の悪化を誘発するからである。一般的に不況下においては設備投資の先送り、流動資産の現金化、経費、人件費の削減などで収益を確保する。
 これをピンサロに置き換えると、人件費の削減の比重が非常に高いと考えられる。営業においても人材にかかる比重が高いピンサロは、在籍している就労者のクウォリティーとパフォーマンスが店の生命線であると考えられ、それを維持するために人件費の確保は最重要課題である。一般的に人件費の削減は、時間外勤務の削減、給与水準の引き下げ、常用雇用の臨時雇用への振り替え、余剰人員の整理(リストラ)などで成し得るが、ピンサロ業界は特殊な期間就労契約と言うべき雇用形態であるため、一般的な方法論は通用しないと考えられる。理由は、ピンサロに限らず性風俗への就労は高収入に支えられているからであり、それが保証されなくなった時点で産業として成り立たなくなるからである。つまり経営側にとっては逃げ場が無い訳であり、その分就労者に負担を強いると考えられる。

 

ピンサロが不況下において生き延びる為に成すべき事

 ピンサロが企業として、不況下だからこそ取り組まなければならないのは、雇用関係の見直しと設備投資だと、あえて提言したい。
 理由は、雇用関係の見直しは、就労者のクウォリティーのアップを生みだし、設備投資は就労者の働きやすい環境と、ユーザーに対するインフォメーションが、店のクウォリティーのアップにつながるからである。基本的スタンスとしては、6,000円のサービスを3,000円にプライスダウンするのではなく、6,000円で9,000円のサービスを提供するという考えかたである。
 しかし、ピンサロにおけるサービスは、ユーザーの主観によって評価されるのであり、経営側のマスターべーションに終わってしまう可能性も否定できない。それを防ぐ為には消費動向を見定めるマーケッティングと経営方針を決定するマーチャンタイジングを徹底的に行う必要がある。つまり、性風俗産業の経営に欠如している一般的営業理論を採用し経営基盤を強固にした上で対策を立てる。そして、就労者の経営参加を推進し店と就労者の意思疎通を計り経営に一体感を持たせる事により、経営基盤をより強固にする。そしてその為の雇用関係の見直しであり、設備投資であると考える。

 

ピンサロにおける雇用関係の見直しと設備投資

 一般企業における雇用関係と比較してピンサロにおける雇用関係で欠如している点は、福利厚生を含む社会保証制度である。
 通常、常用雇用と長期の臨時雇用では義務化されている制度である。ピンサロは一般的に短期就労が多いと思われがちであるが、店を支えている集客力のある就労者は長期に就労していると思われ、したがって社会保険制度を取りいれる必要が義務的にもあり、また職業としても社会的に認知される要素でもある。よって、長期就労の場合は雇用関係改善の一つとして社会保証制度の導入は不可欠であり、結果として就労者のモチべーションのアップにもつながる。
 次に不況下における人員の削減を避ける為、ワークシェアリングを導入する。結果として、ピンサロの魅力の一つである指名制度の存続とユーザーの就労者に対する選択肢を確保できる。しかし、ワークシェアリングを導入した場合、就労者の収入の減収という現象を伴う事も事実であり、就労者の他店への流出という危険負担を負う事も否定できない。
 特に集客力のある就労者の流出は店の経営に関わる重大な問題である。それを防ぐ為にも、強固な雇用関係を築いておく必要がある。そしてその要素として考慮しなければならないのは、就労者の再就職先である。ピンサロの就労適性年齢は20代中頃迄と考えられるが、ピンサロに限らず性風俗への就労を一過性に留める事なく、適性資質を持ち合わせている就労者の継続した就労を容易なものにするために、適性年齢を過ぎても、就労できる体制を整える事が必要である。一案として、人妻、熟女専門の系列店を併設し対応する事で解決できる。また、これは幅広いユーザーの要望に対応する意味でも有意義であると思われ顧客の確保にもつながる。
 設備投資の基本的コンセンサスは、働きやすい環境作りである。一例をあげると、くつろげる待機室の完備、清潔感のある店内のスペース確保などである。ピンサロは比較的低投資で開業できるという安易な考え方を改め、積極的な設備投資を進める事が就労者に安心感を植付け、又ユーザーの支持を得られる。そしてこの経営方針が徹底して行われた時、強固な雇用関係が構築できる。

 

総括

 ピンサロに限らず性風俗産業が魅力ある職業であり続けるためには、高収入を約束できる店の営業力、労働意欲が湧く職場環境、適性年齢に見あった職場の併設、この三点を充実させる事で、その効果として安定した雇用の確保に繋がり、その結果就労者の労働意欲の向上を生みだす。この構造がセールススパイラルであり、これを実現させる事で不況下において生き残ることができる。最後に性風俗産業は、罰金などで締め付ける事で雇用を確保している部分があるが、こういう前近代的なシステムを自ら放棄する事から全てが始まるのではないだろうか。

 風俗産業・経済研究室長 JT